視界に何か飛んでいるように見える…「飛蚊症」は病院に行くべき?なりやすい人や治療方法も解説【眼科専門医が解説】

Sponsored
株式会社オンラインドクター.com
視界に何か飛んでいるように見える…「飛蚊症」は病院に行くべき?なりやすい人や治療方法も解説【眼科専門医が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

視界の中に、黒い点や糸くず、ゴミのようなものなど、目の前に実在しないものが浮いて見えることはありませんか? こうした見え方をもたらす「飛蚊症(ひぶんしょう)」について、メディアでお馴染みの眼科専門医・平松類医師が解説します。そもそも「飛蚊症」とは何か、なぜ起こるのか。病院に行くべきかどうか、また、なりやすい人の特徴や治療方法なども見ていきましょう。

飛蚊症(ひぶんしょう)とは?

「飛蚊症なのですが、手術したほうがいいですか?」「飛蚊症ですが問題ないのでしょうか?」というように、患者さんが「飛蚊症」という言葉を使うことがあります。これは「飛蚊症」=「病名」だと思われているからだと思います。ですが、「飛蚊症」はその名のごとく症状の名前です。「飛蚊症」=「症状」ということになります。たとえば「頭痛」と同じです。頭痛も「頭が痛む」という症状であって、病名ではありません。

 

飛蚊症とは「目玉の中を浮遊する物質が見える」現象をいいます。特徴としては、目を動かすとその浮遊する物質も同じように動く。その物質は固定されていなくて、視界の中をふわふわと浮いているように感じる。白い場所や明るい場所だと症状を強く感じやすい、などがあります。

 

「飛蚊症というのだから、その浮遊物質は蚊が飛んでいるように黒色でなくてはいけない」。そう思われている方もいますが、そうとも限りません。カエルの卵のように透明なものが浮遊して見える人や、ただの薄い光のような塊が見える人など、症状は様々です。

 

飛蚊症の原因としては、目玉の中にある硝子体(しょうしたい。図表参照)の内部に何らかの物質が浮遊していて、それが見えていることです。そのため「目を閉じると見えない」です。目を閉じても見えるということは飛蚊症ではありません。また、浮遊しているので「目を開けている間は絶えず見えている」という人もいますし、「見えたり見えなかったりする」という人もいます。

 

 (画像=PIXTA)
【図表】目の構造 (画像=PIXTA)

飛蚊症は眼科に行くべき?

飛蚊症はあくまで症状ですので、飛蚊症の有無だけでは「飛蚊症だから大丈夫」とか、「飛蚊症だからXXの治療が必要」ということはわかりません。

 

これは頭痛も同じです。薬を飲んで対処する頭痛もあれば、命に関わるため早急に手術が必要という頭痛もあります。その症状を引き起こしている原因によって、その飛蚊症は大丈夫なのか? それとも治療が必要なのか?と判断が変わるのです。ですから、何よりもまず、眼科医に診断してもらうことが第一です。

 

眼科医の診断を受けると、多くは「生理的飛蚊症」といわれるものに該当します。これは「特に問題ない飛蚊症」といってもよいでしょう。“ほかの目の病気によって生じている飛蚊症”ではないということです。

飛蚊症が起こりやすいのはどんな人?

飛蚊症が起こりやすい人は色々あります。たとえば糖尿病がある人には、糖尿病網膜症といって目の奥が出血しやすい状態になることがあり、その後、その出血が硝子体に及ぶと飛蚊症になりやすいというケースがあります。

 

また、高血圧の人は、網膜静脈閉塞症という血管が詰まって出血する病気になりやすく、糖尿病網膜症と同じように出血が硝子体に及んで飛蚊症になりやすい傾向にあります。

 

そのほか、ぶどう膜炎という目の炎症がある人も、炎症によって飛蚊症を生じやすいです。

 

では、多くの人が感じやすい生理的飛蚊症の場合はどうでしょうか? 起こりやすい人の特徴としては、「近視が強い」というのが挙げられます。人間は近視になると、目の直径(=眼軸)が伸びます。近視がない状態では、人間の眼軸は24mm程度です。それが28mm、30mmと長くなるわけです。眼軸が伸びればその分容積も増えるため、結果として硝子体の混濁も生じやすくなるのです。

 

また生理的飛蚊症は、後部硝子体剥離が起こった場合も生じやすいです。「後部硝子体剥離」なんていうと、まるで病気のように感じる方もいるでしょう。けれども「後部硝子体剥離」は病気ではありません。目の玉の中にある硝子体は、年齢により、徐々にゼリー状のものが減り液状のものに置き換わります(液化といいます)。この中で、目の奥の硝子体が目の奥から外れてくる通常の年齢性変化のことを、後部硝子体剥離といいます。

 

飛蚊症の治療方法はある?

生理的飛蚊症の場合は、基本的には治療せず、経過を見るのが一般的です。なぜならば、治療には必ずリスクが伴うからです。しかしリスクをとる場合は、レーザー治療硝子体手術があります。

 

勘違いされがちなのが、網膜裂孔といって目の奥に穴が開いた場合や、糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症で出血している場合に適応される「レーザー治療」です。この場合のレーザーは、保険適応では「網膜光凝固術」と呼ばれます。このレーザー治療は、飛蚊症を治すわけではありません。飛蚊症の原因となった“目の奥の穴”を放置すると網膜剥離になりやすいので、その進行を抑えるためにレーザーをするのであって、飛蚊症は治りません。糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症に対する網膜光凝固も、飛蚊症の原因となる出血を止めますが、すでに出てしまった出血をなくすわけではないので、飛蚊症はなくならないという点が大切です。とはいえ、これらが病気を悪化させないために必要な治療であることに変わりはありません。

 

飛蚊症自体を改善するためのレーザー治療は「YAGレーザー」といわれ、生理的飛蚊症の場合のみに行われます。また、このレーザーは飛蚊症をなくすのではなく、分散させるという目的を持っています。レーザーによる白内障・網膜出血など様々なリスクがあります。硝子体手術では、糖尿病網膜症などによる硝子体出血などの場合は視力を下げることがあるため、手術の適応になります。そのほか、出血や炎症が強い場合も治療的に手術をすることもあります。状況にもよりますしリスクもある治療となるので、主治医との相談が必要です。主治医が様子を見ましょうといった場合は、特に手術は必要ないと判断したということです。

「怖い飛蚊症、怖くない飛蚊症」を見分けるには?

残念ながら、「この症状の飛蚊症なら大丈夫」「この症状の飛蚊症なら眼科に行かなければ」というように、きれいに分けることはできません。飛蚊症が生じたら一度は眼科でチェックしておきましょう。受診してみたら実は穴が開いていて、放置すると網膜剥離になっていたのを早期に治療できた、というケースもありました。

 

受診後は主治医の指示に従うことになります。飛蚊症の程度が変わらなければ経過観察となりますが、急に増えた場合は何らかの治療が必要なことがあるので、再度眼科を受診するようにしてください。

 

 

平松 類

眼科専門医・医学博士

二本松眼科病院 副院長

 

※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。