世帯所得を上げるためにも「貯蓄から投資」を推進するが…
同調査では「生活意識」についても尋ねています。それによると、「生活が苦しい(「大変苦しい」と「やや苦しい」の合計)」が53.1%。コロナ前の2019年調査から1.3ポイントほど改善しました。ただ「ゆとりがある(「ややゆとりがある」と「大変ゆとりがある」の合計」は、5.0%と前回調査から0.7ポイント減少。暮らし向きが良くなったとは言い難い状況です。また児童のいる子育て世帯では「生活が苦しい」の回答が59.2%と6割。
ゆとりを感じて生活できるのは、20世帯に1世帯。5割が生活苦を訴えている……日本人、なかなか厳しい状況下にあるといえそうです。
どうにかして所得を上げる術はないか……そこで政府が期待し、推し進めようとしているもののひとつが、「資産所得倍増」をスローガンにした「投資」。評価はさておき、先日も「少額投資非課税制度(NISA)の恒久化が必須だ」と表明した岸田首相のニューヨーク証券取引所での講演は話題になりました。
NISAには現一般、ジュニア、つみたての3つがあり、一般とジュニアは2023年まで、つみたては2042年までの制度です。2024年から一般は期限を2028年までに延長したうえで、2階建ての新NISAに移行する予定。ジュニアは2023年で廃止されます。
投資を促す制度ではありますが、期限があるため、長期間を見据えた資産形成では使い勝手には少々課題がありました。それが恒久化となると、投資に対する心理的ハードルはさらに下がるだろうといわれています。
ただ「貯蓄から投資」の話となると、「そもそも投資の元金がない!」「まずは所得増が先だ」という議論が浮上します。前述のように、日本の家庭の中央値は年収440万円。平均以下が3分の2を占めます。確かに投資を考える余裕もない人が多く、そのようななか、「投資を!」と高らかに宣言したところで、ピンとはこないでしょう。
投資できない人が多数派……そこで「貯蓄から投資」を進めれば、さらなる格差拡大は確実という専門家も。所得増加の道のりは険しく、この先の日本では、なかなか明るい未来を描くことはできないようです。