運動は「精神疾患の予防」にも効果的
続いて、認知機能と運動の関係性についてみてみましょう。医学雑誌「Neurology」に2001年に掲載された論文です。認知機能が正常であった4,615人を5年間フォローアップしたところ、3,894人が認知機能障害なし、436人が認知機能障害あるが認知症なし、285人が認知症と診断されました。
彼らを身体活動レベルごとに、「高い(週3回以上、早歩き以上)」、「中等度(週3回以上、散歩レベル)」、「低い(それ以外)」に分類したところ、身体活動のレベルが高い群は低い群に比べて、認知障害の発症率はなんと0.58倍にまで下がりました。
また、アルツハイマー型認知症の発症率も0.50倍に、認知症の発症率も0.63倍になり、身体活動レベルを高く維持すると、認知機能障害の予防にもなることがわかったのです※。
※ Arch Neurol 2001;58:498–504
すでに慢性疾患を持つ人についても研究が行われています。
医学雑誌「Internal Medicine」に2010年掲載された論文です。慢性疾患を持つ座りがちな成人を対象とした学術論文40本を調べ、ベースライン時(測定直前の段階)と、運動トレーニング後に測定された不安を定量評価するため、「3週間以上、運動を介入したグループ」と「まったく運動を行わないグループ」の2群に分けたところ、「3週間以上、運動を介入したグループ」は「まったく運動を行わないグループ」と比較して、不安症状が有意に減少したというのです。
これにより、「運動トレーニングは慢性疾患を有する座りがちな患者における不安症状を軽減する」という結論が導き出されました※。
※ Arch Intern Med. 2010 Feb 22;170(4):321-31
続いて「Journal of Anxiety Disorders」に掲載された論文では、パニック障害、全般性不安障害(毎日の生活のなかで漠然とした不安や心配を慢性的に持ち続ける病気)、または社会不安障害(人前で恥をかいたり、恥ずかしい思いをしたりすることを極度に恐れ、強い不安や苦しみを感じ、避けてしまう)外来患者74人に対して16ヵ月間、無作為に研究が行われました。
研究では、「認知行動療法と運動」を行う群と、「認知行動療法と教育セッション」を行う群に分けたところ、「認知行動療法と運動」を行う群のほうが、抑うつや不安、ストレスが軽減していることが明らかになりました。
これにより、運動は精神障害を有した患者さんの治療にもなりうることがわかったのです※。
※ J Anxiety Disord. 2008 Aug;22(6):959-68.
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