酷いと歩行困難に…「変形性膝関節症」とは
「変形性膝関節症」とは、簡単にいえば、膝の軟骨が加齢とともに少しずつすり減ってしまい、最終的には膝関節が変形してしまう病気です。
初期症状は、運動した際の膝の痛みや違和感程度ですが、症状が進むにつれて安静時にも痛みが出たり、階段の昇り降りが難しくなったりします。酷いときは歩行困難や痛みで眠れなくなってしまうケースもあります。痛みを進行させないためには、初期症状のうちに手を打つことが重要です。
変形性膝関節症が疑われる場合は、問診や触診を行い、以下の項目を調べます。
・膝関節の可動域に制限が出ているか
・膝関節が腫れているか
・O脚に変形していないか
これらをチェックしたうえで、必要に応じてレントゲン検査をして軟骨の減り具合や変形の進行状況などを調べます。関節の軟骨はレントゲンでは写らないため、場合によってはMRIやCTで関節軟骨の摩耗程度や半月板と骨の状態の変化を把握することもあります。
変形性膝関節症は、膝関節の変形の度合いや痛みの状況によって、治療において手術が必要かどうか判断されます。
痛みが強くない場合は「運動」か「薬」で治す
痛みがそれほど強くなく、日常生活を送ることができる場合は手術を行わないのが一般的です。
痛みが出始めると膝を動かさなくなりがちですが、筋力が低下するため、膝関節への負担が増えて症状が悪化してしまいます。この悪循環を断ち切るためにも、運動療法によって膝を支える筋肉を鍛え、膝関節の動きを改善することが必要なのです。
米国整形外科学会(AAOS:American Academy of Orthopedic Surgeons)が発表した変形性膝関節症のガイドラインでも、変形性膝関節症の治療には「可動域拡大」「筋力強化訓練」「有酸素運動」という3つの運動を行うことが推奨されています。
痛みがひどい場合には、消炎鎮痛剤、湿布、塗り薬などを使った薬物療法を行います。
また、「ヒアルロン酸注射」は変形性膝関節症に対する治療法として長年の歴史があり、スタンダードな治療として知られています。これは、ヒアルロン酸を関節へ注入することで、関節軟骨の滑りをよくして膝の動きをスムーズにし、痛みを軽減させるものです。ヒアルロン酸を注射しても軟骨の再生を促すことはできませんが、痛みを軽減する効果は期待できます。
また、近年注目を集めている治療に「PRP注射」というものがあります。
これは再生医療の一種で、患者さん自身の血液から作った「多血小板血漿[たけっしょうばんけっしょう] (Platelet Rich Plasma: PRP)」を直接膝関節に注入する方法です。PRPにはたくさんの成長因子が含まれており、それによって傷ついた組織の修復や痛みの軽減などを期待することができます。
ヒアルロン酸注射と違い組織の再生を期待することができるため、「ヒアルロン酸注射ではあまり効果がみられなかったけれど、手術は避けたい」という方には最適な治療法といえるでしょう。
ただし自費診療であるため、ヒアルロン酸治療に比べて高額というデメリットがあります。とはいえ、症状の進行を抑えるには有効な手段です。
手術の場合は「2種類」のいずれか
運動療法や薬物療法を行っても痛みが改善しない場合や、日常生活に支障をきたしている場合には、手術を検討します。変形性膝関節症の手術は大きく分けて2種類あり、「膝骨切り術」あるいは「人工関節置換術」のいずれかです。
膝の変形があっても関節の外側はあまり傷んでいない、または変形が強いが年齢が若い場合は、「膝骨切り術」を行います。
膝骨切り術では、膝関節近くで脛骨(すねの骨)の骨切りを行い、O脚を軽いX脚に矯正してプレートで固定します。自分の膝関節を残すことができるため、手術後、生活上の制限はほとんどありませんし、スポーツや趣味なども再開できます。
一方、変形性膝関節症が末期の状態まで進行した場合には、「人工関節置換術」を行うのが一般的です。
これは、傷んだ軟骨や骨を人工膝関節の形に合わせて薄く削り、金属やセラミック製の人工関節を自分の骨の上にしっかりと固定する術式です。変形の矯正を確実に行うことができ、痛みを軽減できる効果が高いため、手術を受ける患者数も増加しています。
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