労働生産性が低い日本…労働時間が減れば、賃金があがらないのは当然
日本がこの30年、平均賃金が上がらなかったのは、働かなくなったから……確かにひとつの理由かもしれません。ただほかの国も労働時間を減らしているにも関わらず、平均賃金は上がっています。そこで浮き彫りになるのが、日本の労働生産性の低さです。
時間当たりでみると、2021年、日本は47.4米ドル/時間で、世界主要国43ヵ国中30位。1人当たりの労働生産性は79,031米ドルで、世界主要国47ヵ国中30位。日本の労働生産性の低さはいまに始まったことではなく、平均賃金が世界でも上位だった90年代初頭でも、労働制性の低さは顕著でした。それをカバーしていたのが労働時間。その時間が減っているわけですから、賃金があがらないのは当然の結果、というわけです。
【世界主要国「時間当たり労働生産性」上位10】
1位「アイルランド」139.2米ドル/時間
2位「ルクセンブルク」128.0米ドル/時間
3位「ノルウェー」106.1米ドル/時間
4位「ベルギー」91.8米ドル/時間
5位「デンマーク」91.5米ドル/時間
6位「スイス」86.2米ドル/時間
7位「スウェーデン」85.7米ドル/時間
8位「米国」83.8米ドル/時間
9位「ドイツ」80.6米ドル/時間
10位「フランス」80.1米ドル/時間
【世界主要国「1人当たり労働生産性」上位10】
1位「アイルランド」226,616米ドル
2位「ルクセンブルク」176,938米ドル
3位「ノルウェー」151,437米ドル
4位「米国」148,514米ドル
5位「ベルギー」137,114米ドル
6位「スイス」132,233米ドル
7位「デンマーク」124,693米ドル
8位「スウェーデン」123,719米ドル
9位「フランス」118,866米ドル
10位「オーストラリア」118,234米ドル
出所:OECD(2021年)
30年間、賃金があがらない……その理由は、諸外国が「生産性と賃金」を上げる努力をしてきたのに対し、日本はしてこなかった、ただそれだけのこと。日本の生産性の低さは、前述の通り、「長時間労働=努力」という昭和時代に築かれた美徳であり、その美徳を評価する姿勢にあるといえます。仕事の効率化を求めなかった結果、デジタル化に遅れ、もはや取り返しのつかないレベルになっている、という指摘も。
スイスのビジネススクールIMDが発表した『2020年 世界デジタル競争力ランキング』では、日本は63カ国・地域中29位。2017年の調査開始以降、最低の順位で、韓国8位、台湾11位、中国17位と、アジアにおいてもデジタル後進国だといえるでしょう。同調査で特に低迷している項目が「知識」。日本ではいまだにデジタルへの拒否反応は強く、いまも昭和のように紙の書類が飛びかっているという企業も。そのような環境では、これから必要とされるデジタル人材も育ちようがありません。
日本だけが変革がみられず、それによって賃金も低迷。ここから脱出するためには、組織はもちろん、一人ひとりの意識を変えることが第一歩なのです。