先日、「新宿駅にタヌキ」といったニュースが話題になりましたが、農作物が食い荒らされたり、人に危害があったりと、野生鳥獣による被害が深刻化しています。それに対して、農水省が年間160億円かけている“おいしい対策”があるとか。みていきましょう。
えっ、こんなところにクマが!? 深刻化する「鳥獣被害」を美味しく減らす「農水省の思惑」 (※写真はイメージです/PIXTA)

クマ、シカ、イノシシ…深刻化する獣害

——札幌ドーム近くでクマ目撃

 

プロ野球やコンサートが行われることでお馴染みのドームで、クマ、しかも北海道ですから、ヒグマがいたというニュースに驚いた人も多かったのではないでしょうか。札幌に土地勘のある人であれば、「結構市街地のほうまで来ちゃったなあ」と思う程度で「ない話ではない」といったところでしょうか。そんな道民でも、昨年、同市東区の住宅街にヒグマが出たときは、さすがに驚いたとか。

 

クマについていえば、2022年度、本州、特に東北でツキノワグマが人を襲う事件が相次ぎ、8月までに人身被害は40件で過去10年で最多記録だとか。そんな状況に、2016年5月~6月にかけて、タケノコや山菜採りで入山した4人が死亡、4人が重軽傷を負った「十和利山熊襲撃事件」のほか、1970年に北海道・日高山脈で3人の大学生が犠牲となった「福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件」、さらには史上最悪の獣害とされている「三毛別羆事件」まで、関連ニュースとして何度も語られることから、「おちおちピクニックや登山なんてしていられない」という声も。

 

なぜこれほどまでに獣害が増えているのか、人が野生動物の生育域を侵しているとか、過疎化によって耕作放棄地が増え、そこにクマが移動してきて人と遭遇しやすくなったなど、さまざまな理由がいわれていますが、狩猟者も減少し駆除が追いついていないという課題も挙げられています。

 

林野庁・環境庁・環境省『狩猟関係統計』によると、狩猟免許発行数は2017年20万9,550件。ピークだった1970年の53万2,265件から半減以上しています。

 

獣害はクマのような人への危害だけでなく、イノシシやシカなどによる農作物への被害も増加しています。その要因もクマと同様。自然破壊や過疎化、狩猟者の減少など、いくつもの要因が重なり、問題は深刻化しているのです。

 

農林水産業『農作物被害状況』によると、2020年度、野生鳥獣による農作物被害額は全国で161億0,908万円。都道府県別にみると、最も大きかったのは、「北海道」で48億1,819万円。続く「福岡県」は6億0,813万円。「熊本県」「広島県」「長野県」と続きます。また農業生産額に占める被害額が多いのは「山口県」で生産額589億円に対し被害額は3.4億円。「大阪府」「広島県」「京都府」「北海道」と続きます。