獣害対策&地域振興…一石二鳥の対策
野生鳥獣による農作物の被害額は減少傾向にありましたが、ここ数年は160億円前後で推移。高止まりしている状況です。その解決策のひとつとして注目を集めているのがジビエ。これまで廃棄していた捕獲鳥獣を食肉として活用しようといった取組みです。2014年に「今年のひと皿」に選ばれるなどして、以前より市民権を得たジビエ料理ですが、積極的な捕獲の推進で農作物被害の低減が期待されるほか、農泊・観光や外食・小売など、農山村地域の所得向上も期待できるとされています。
農林水産省の資料によると、食肉処理施設が2021年度に処理した 野生鳥獣のジビエ利用量は 2,127トンで、 前年度比17.5%増加。このうち食肉販売されたのは1,324トンで、前年比11.7%増加となりました。農水省では鳥獣の捕獲等の強化やジビエフル活用への取組みを支援する交付金などにより、2025年までに利用量4,000トンまで拡大させる計画です。
2021年、ジビエ利用量がトップだったのはシカによる被害が深刻な「北海道」で785トン。続く「兵庫」は215トン。「長野県」164トン、「鳥取」89トン、「三重」80トンと続きます。ただ野生鳥獣による農作物の被害は全国的な問題にもかかわらず、ジビエフル活用の取組みには地域差があります。
【都道府県別「ジビエ利用量」トップ10】
1位「北海道」785トン
2位「兵庫県」215トン
3位「長野県」164トン
4位「鳥取県」89トン
5位「三重県」80トン
6位「長崎県」78トン
7位「京都府」68トン
8位「広島県」60トン
9位「岡山県」59トン
10位「静岡県」50トン
10位「福岡県」50トン
出所:農林水産省『令和3年度野生鳥獣資源利用実態調査』より作成
ジビエ肉で農作物被害を減らし、地域振興も……バラ色の未来を描き、2022年度、農林水産省は160億円ほど予算を費やしています。しかし、ジビエ肉は処理が難しかったり、肝心の飲食店需要がコロナ禍で低迷していたりと課題は山積み。そもそもジビエ肉利用量が増加したからといって、鳥獣被害防止にはならないという専門家も。どちらにせよ、何もかもが値上げとされているなか、少しでも安く、そして美味しいお肉が手に入れば、消費者としてはうれしいかぎりです。