家族を介護することになったとき、気になるのは仕事。介護度が上がっていくとそれだけ負担は大きくなり、介護と仕事の両立は難しくなるでしょう。そんな介護者を支援する制度も整備されていますが、それでも介護の負担は重いようです。みていきましょう。
「介護休暇を取りたい」「はぁ!?」…親を世話する子に訪れる、残酷すぎる老後 (※写真はイメージです/PIXTA)

仕事との両立が難しく…退職しても負担増の現実

介護者にとってありがたい制度である「介護休暇」「介護休業」。しかし、「制度を利用しない(しなかった」という人は結構な数にのぼります。その理由として多く挙げられているのが「勤務先に介護休業制度が整備されていない」「勤務先の介護休業制度を知らない」といった、無理解によるところが多くなっています。また休業制度が整備されているにも関わらず、「制度を利用しにくい雰囲気があった」という理由も多く、「家族の介護のため休みを……」と言ったら、嫌な顔をされたり、拒否されたりというケースも珍しくありません。なかには違反ではありますが、解雇されたというケースも。

 

「代替職員がいない」という理由も多く、特に企業規模が小さくなると、「権利とはいえ、みんなに迷惑がかかるから……」と遠慮してしまうでしょう。

 

制度の利用の有無に関わらず、介護の負担は相当なもの。仕事と介護の両立が難しく、「退職」を選択する人は、年に10万人弱いるといわれています。同調査によると、介護離職者の7割が女性。年齢別にみていくと、「50代」が最も多く35.5%。「60代以上」が25.1%、「40代」が19.2%と続きます。

 

とはいえ、介護退職して少しは楽になったのなら、それは一つの解決策といえるかもしれません。しかし退職後に「精神面で負担が増した」は66.2%、「肉体的に負担が増した」が.2介護退職したのち「精神面で負担が増した」が63.2%、「経済面で負担が増した」が67.6%。介護退職が何ら解決に至っていないケースが目立ちます。

 

どれほど介護生活が続くかは人それぞれ。ただ50代で介護退職となると、そのまま再就職せずに引退というケースも多いでしょう。そうなると心配になるのが自身の老後です。

 

たとえば50歳の平均的なサラリーマンが介護退職し、再就職はせずに引退したとしたら、65歳から手にできる年金は月に12万7,000円ほど。60歳定年まで平均的な給与を得ていたとしたら、年金は月に15万7,000円となり、月に3万円、1年で36万円ほど年金受給額に差が生じます

 

*厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』男性の推定年収より算出

 

また老後は「年金+貯蓄の取り崩し」で生活するというのが一般的。必要な貯蓄額は、夫婦で800万円とか、2,000万円とかさまざまにいわれています。この老後を見据えた貯蓄のつくり時というのが50代。教育費や住宅ローンの目途がつき、さあこれからお金を貯めるぞ、というタイミングです。ここで介護退職となると老後のための貯蓄ができず、限られた年金だけでどうにかするよう迫られるわけです。

 

自身の老後の在り方がガラリと変わってしまう可能性がある親の介護。介護が終わったその先のことまで考えるのであれば、介護退職は避けたいところです。現行制度の理解が進むことはもちろん、さらなる制度の充実が望まれています。