「万が一に備える」「増やしたい」どちらか選ぶなら…
前述しましたが、保障ありきで学資保険に加入するのは、まだ納得できるのですが、保障を考慮しながらほかの準備方法がないか検討するべきです。
政府は、「貯蓄から投資へ」と個人の資産形成を後押しすることを念頭に税制優遇制度を設けています。学資保険も生命保険料控除という税制優遇があり、現在の生命保険料控除は年間最大4万円が所得から控除されます。仮に前述のように月1万円の積み立ての場合、年間12万円の保険料を払っていますが、年間で4万円を所得から控除することができます。所得税率が10%の人であれば、4,000円、5%の人であれば2,000円のメリットとなります。
対して、現在の教育費の準備として有効と思える準備方法は、「直接投資」で投資を行う方法があります。投資は損失を被る可能性があるからと否定的な人も見受けられますが、学資保険など保険商品も預かった保険料を有価証券などで運用を行っています。保険商品などで運用を行うことを「間接投資」といいます。
直接投資に対する税制優遇制度は、現在、NISAという制度があります。NISAは少額投資非課税制度の愛称で、一般NISAとつみたてNISAとジュニアNISAと3種類の制度があります。投資初心者という人でも投資を始めやすいのは、つみたてNISAです。つみたてNISAは金融庁が示す長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託という基準を満たした商品が選ばれています。NISAには、所得控除はありませんが、つみたてNISAの年間投資上限額の40万円の積立に対して、運用益が非課税となります。現在の運用益などに課税される税率は20.315%(所得税15.315%、地方税5%)となっています。
仮に毎月1万円の積み立てで5%の運用利回りが期待できるとすると、18年間積み立てると349万円程度になります。運用益は約133万円で本来であれば20.315%課税されますので、約27万円が引かれて約106万円を受け取ることができますが、NISAを活用すれば運用益には課税されませんので約133万円をそのまま受け取ることができます。
では、保障の面で考えるとどうでしょう? 直接投資の場合は、保障機能がありません。親が万が一亡くなった場合は、収入が無くなり遺族年金を受け取ることになり、積み立てを継続していくことが困難になることも考えられます。そこで生活費や教育費の確保として、収入保障保険という保険に加入し、積み立て分も含めた保障額を設定するのもよいのではないでしょうか。
これまでは教育費は保険で準備するという考え方が広まっていましたが、お金を効率よく増やす方法は保険以外にも考えられます。目的に対する準備方法を検討する場合、過去の主流にとらわれず最適な方法を選ぶ必要があるでしょう。
吉野裕一
FP事務所MoneySmith
代表