「子どもが生まれたら学資保険」とよくいわれていました。しかし、昨今の超低金利で銀行などの預貯金だけではなく、学資保険でもお金を大きく増やすことは難しい時代。FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が、いまの時代のベストな教育資金の準備方法を解説します。
増えない学資保険…時代に合ったベストな教育資金の備え方は?【お金のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

学資保険で教育資金の準備は妥当?

家庭を持ち子どもが生まれると、大きな心配ごとのひとつが子どもの教育費です。子どもが生まれたばかりの夫婦の相談も、教育費の準備方法について知りたい、といった内容が多くなっています。

 

昔は「子どもが生まれたら学資保険」とよくいわれていました。最近でも、子どもが生まれたら学資保険の加入を検討する人は少なくはありません。20代のご夫婦は学資保険以外の準備方法を検討する人も増えてきましたが、30代のご夫婦では、学資保険などの「保険」で教育費の準備を検討する人もまだ多くいるように思います。

 

多くの家庭では、学資保険に加入する理由として、保障も考えた加入ではなくお金を効率的に増やしたいという思いが強いです。しかしながら、学資保険への加入を検討する場合には、本当に学資保険にメリットがあるのか確認する必要があります。

 

では教育費の準備には、どこからお金を捻出していこうと考えているかというと、児童手当をそのまま教育費の準備にまわす家庭も多くみられます。現在、児童手当は3歳未満の子どもには1万5,000円、3歳以上で中学卒業までの子どもは1万円(小学校卒業前の第3子は1万5,000円)が支給されています。現在の支給額でみると子ども1人に対して毎月1万円を教育費の準備として考えるという家庭も多いです。

 

現在、大学在学中にかかる費用としては、毎月1万円の積み立てでは、必要な額を準備することができず、預貯金よりもいいだろうと学資保険に加入しても、結局ほとんど増えないという現状もあり、子どもの教育費の準備として学資保険は適していないといえます。

大学入学までに具体的にいくら備えるべき?

教育費で一番気になるのが大学にかかる費用だと思います。学資保険では小・中・高校に入学するタイミングで一時金がでるタイプのものもありますが、昨今の低金利で、大学入学前に一時金が出るものや、大学入学後に年金のように支払われるタイプのものも出ています。現在の学資保険では払った保険料が倍になるようなものはなく、僅かに増えるものか逆に払った保険料のほうが多くなる商品も増えています。

 

生命保険文化センターの「大学生にかかる教育費はどれくらい?」のデータによると、国立大学4年間にかかる費用は自宅から通う学生でも537万4,000円、下宿やアパート暮らしなどの場合では835万4,000円となっています。私立の文系に通った場合でも、自宅から通う学生は697万6,000円、下宿などでは978万4,000円と高額となります。

 

単純に毎月1万円を18年間積み立てたとすると216万円となりますが、国立大学の自宅から通うとしても半分にも満たないことになります。仮に10%増えるような学資保険に加入した場合、約237万円と僅かには増えますが、半分くらい不足することは変わりません。

 

学資保険で500万円以上を準備しようとすると毎月2万円以上が必要になるということになります。子どもが2人いれば毎月4万円以上、3人ともなれば毎月6万円以上の積み立てが必要になることになります。

 

ちなみに1万円の積み立てで500万円以上に増やそうとすると運用利回り8.3%の商品で運用することが必要となります。国立大学で自宅通学であれば500万円の準備でもよいでしょうが、国立大学以外に入学することを考えると500万円以上かかる可能性は高くなっていますので、できれば700万円以上を考えておく必要があるでしょう。