眼科医に「メガネをかけている人」が多いのはなぜ?コンタクトやレーシックにしない事情とは【眼科専門医が解説】

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眼科医に「メガネをかけている人」が多いのはなぜ?コンタクトやレーシックにしない事情とは【眼科専門医が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

眼科医はメガネをかけている人が多い…そんなふうに感じたことはありませんか? また、コンタクトレンズや、レーシック、ICLといった手術もあるのに、なぜメガネなのかというのも気になります。メディアでお馴染みの眼科専門医・平松類医師も、まさにメガネをかけた眼科医の一人です。眼科医のメガネ人口が多いのはなぜか、視力矯正手段としてメガネを選ぶのには何か特別な理由があるのかを尋ねました。

眼科医はメガネ人口が多い?

眼科医はメガネをかけている。そんなイメージがある人は多いのではないでしょうか?

 

本当にメガネが多いかどうかという統計はないのですが、確かに一般社会と比較して眼科医はメガネをしている人が多いです。コンタクト・レーシック・ICLなど視力回復の方法があって、他人にその手術をしている眼科医たち自身がメガネをしているというのはどういうことなのか? お金儲けのために人に自分にはしたくない手術をしているのか?と思ってしまうかもしれません。一体なぜ眼科医はメガネをする人が多いのでしょうか? そこにはいくつかの理由があります

コンタクトよりメガネの眼科医が多いと感じる理由は?

■高学歴ほど近視になる傾向がある

まずそもそもの理由として、医者は一般社会よりも近視が多いということが挙げられます。一般的に学歴が上がるほど近視の傾向が高いということが研究でわかっています。医学部を卒業しているという時点で大卒であり、近視の確率が高いのです。ですから一般社会と比較すると近視が多く、結果としてメガネをかけざるを得ない人が多いということがあります。

 

それはわかったけれども、では、コンタクトよりメガネ派な眼科医が多いのはなぜなのか?と思うかもしれません。理由を見ていきましょう。まずコンタクトレンズとメガネには、以下のようなメリットとデメリットがあります。

 

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【コンタクトのメリット】

見た目からは矯正しているのがわからない

目に直接つけるので視野が広い

 

【コンタクトのデメリット】

目が乾く

感染症・アレルギーのリスクがある

 

【メガネのメリット】

つけ外しが可能

目が乾きにくい

 

【メガネのデメリット】

見た目からして矯正しているのが明確

視野がやや狭く感じることがある

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■眼科医はメガネが多い!感じるのには、「患者側の先入観」もある

患者側は、眼科医なのにメガネをしている、ということに違和感を覚えます。内科の先生がメガネをしていても違和感はありません。

 

糖尿病内科の先生がすごく太っていたら説得力もないし、違和感を覚えるでしょう。同じように、眼科医がメガネをかけていると患者はつい「なぜなんだろう」と思うので、目立ってしまうということもあります。違和感があるからメガネの眼科医に目が行きやすく、「眼科医はメガネが多い」と感じてしまう部分もあります。

 

でも、眼科医(たとえば私や周りの医師)はなぜ便利なコンタクトでなくメガネをしているのか? そこには理由があります。

 

■コンタクトにしない理由①:感染症を予防するため

眼科医がコンタクトレンズをしない理由として、「目の感染症の現場にいるから」というのが挙げられます。

 

特に代表的なのは流行性角結膜炎(かくけつまくえん)という病気です。アデノウイルスというウイルスによる感染症の結膜炎です。アデノウイルスは非常に感染力が強く、学級閉鎖なども起こしてしまうようなウイルスです。かつて私が勤務していた大学病院ではこの感染症により病棟閉鎖したこともあります。

 

このウイルスは結膜炎を引き起こします。そしてウイルスは、目やにや涙にふくまれます。その目やにや涙を触った部分(手など)でどこかに触ると、そこから2週間はウイルスがなくならないというのが特徴的です。今ではコロナ禍ということもありアルコール消毒が一般的に行われていますが、アルコール消毒だけではなかなか防ぎきれません。

 

眼科医はこのような強い感染症を持った患者さんを外来で見ることになるわけです。その際は対策を行いますし、患者さんもいろいろと触らないように注意します。けれどもどこかにこのウイルスがいることがありえます。それを触った手でつい目を触ってしまう可能性があります。コンタクトレンズを入れていると目がゴロゴロして、つい目に手が行ってしまうことがあるでしょう。そのため、つい目を触りがちな医師の場合はコンタクトを避けているわけです。

 

■コンタクトにしない理由②:眼科の仕事は目が疲れやすい&乾きやすいから

眼科の診療というのはかなり目を使う作業です。もちろんそれで近視がすごく進むというわけではありません。けれどもかなり細かい作業を要するため、眼精疲労が起きやすいです。普段の診察では、患者さんの目を顕微鏡で拡大して見ています。さらに手術も、肉眼ではなくて顕微鏡で拡大して見ています。

 

よく「私は3針縫った」などといいますが、眼科では数mm切っただけで3針縫います。このように細かい作業であると目を集中して使うことになりますが、集中して目を使うと目は乾燥します。なぜならば、私たちはぼーっとしているときはまばたきの回数が程よく、1分に20回ほどされますが、集中して見ているときはまばたきの回数が減ってしまうからです。となると、目が乾きやすくなるコンタクトは難しい。このことからも眼科医はメガネを選びやすいのです。

 

以上の理由はあるものの、コンタクトをしている眼科医は私の周りにも結構います。ICLやレーシックなどの屈折矯正手術を受けている医師よりは多いです。でも手術があるし、人にすすめたり、実際に手術したりするのに自分はしないというのはおかしい気がします。なぜ眼科医はレーシックやICLをしないのでしょうか?

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