メガネの眼科医はなぜレーシックやICLをしないのか?
もちろん眼科医の中にも、レーシックやICLを受けている人はいます。しかし私(眼科医)はしていません。なぜでしょうか? 屈折矯正手術のメリット・デメリットともに、手術をしない理由を見ていきましょう。
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【屈折矯正手術のメリット】
メガネやコンタクトなど矯正器具がいらない
【屈折矯正手術のデメリット】
短期・長期合併症のリスク(ドライアイなど)
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■屈折矯正手術をしない理由①:人によってはメリットが少ないから
屈折矯正手術の最大のメリットは、メガネやコンタクトレンズなどの屈折矯正器具がいらなくなるということです。しかし子供のころからメガネに慣れているしその取扱いも詳しく知っているので、あまりメガネを煩わしく感じていないということもあります。そのため、結果として、手術をしてメガネやコンタクトがいらなくなることのメリットはそれほど大きくないのです。
また眼科医と言っても最初は忙しいです。大学病院などに勤めているとまともな休みも取れません。私も40代中盤ですが長期の休みを取るのはいまだに難しいです。やっと多少の時間が取れるようになってきても、そのころには老眼が始まってくるので、屈折矯正手術をして近視を治しても、遠くが見えるようになったが手元を見るには老眼鏡が必要になる、という事態に陥ります。そしてそのうち白内障になるので、見えづらさを解消するにはその白内障手術をやればよい。となると、屈折矯正手術をやるメリットが非常に少ないのです。
■屈折矯正手術をしない理由:②悪い例を見ているから
屈折矯正手術を主にしているクリニックの場合は成功例をたくさん見ます。「先生ありがとう」と声をかけられて嬉しくなるので、さらに手術をすすめたくなるでしょう。けれども屈折矯正手術をしていない眼科医にとっては、屈折矯正手術後の患者さんは特に問題なければ受診しません。受診する場合は何らかの問題が生じているからです。感染症が起こっている、網膜剥離になっているなど、そういうネガティブな例をわずかでも見てしまうと、やはり二の足を踏んでしまうということがあります。
また、手術は短期的によくても長期的には何か起こる可能性があるというのも知っています。かつてはよいと思われていた手術が、何十年してから「こういう問題点があった」というふうにわかることがあります。たとえばレーシックを受けた場合は、眼圧(=目の圧力)を測っても数値が正確に出ないので、緑内障になったときの治療に苦慮したり、発見が遅れたりしてしまいます。