日常の中でうまくコミュニケーションがとれなかったり、1つのことに妙にこだわったり……。グレーゾーンという単語を聞いたことがあるけれど、「うちの子はそれなのでは?」と不安になったことはあるでしょうか。発達障害のグレーゾーンとは一体どのような状態のことなのか、どうとらえたらよいかなど、臨床心理士の佐瀬りささんに、グレーゾーンの子どもとの向き合い方について伺いました。
うちの子、発達障害のグレーゾーン⁉ 臨床心理士が特徴と子どもへの接し方を詳しく解説

子どもの課題や特性はみんな違う

 

「発達」とは一体どのようなものでしょうか。

 

成長の段階で、子どもには超えるべき「ハードル」が次々と現れてきます。子どもはそれらを1つひとつ飛び越えながら成長していきます。

 

国が設定した一般的な教育カリキュラムとは、成長段階に応じてハードルの順番や高さなどを想定しています。そして、3才ならこれくらい、1年生になったらこれくらいの課題があるとして、「こういう方法で飛び越えさせましょう」と決めています。

 

ところがグレーゾーンの子どもの場合、そのハードル、つまり課題が出てくる順番や高さが違うだけなのです。このハードルを「洋服のサイズ」にたとえることもできるでしょう。市販されている洋服は、「O歳ならOcm位」とする目安に基づいて作られています。ただし、それはあくまでも平均であって、すべての子どもにぴったり合うわけではありません。

 

グレーゾーンの子どもは、一般的なサイズに照らしてみると袖が長すぎたり、丈が長すぎたりするだけのことです。ですから体に合わせて調整する必要がある、そんなふうに考えるとよいでしょう。

サポートがないために二次トラブルになることも

 

現状の学校教育では、先生1人につき35人もの子どもをみていますし、中にはうまく飛び越えられない場合もあるでしょう。すると、「ああ、飛び越えられなかった」と自信を失ってしまうこともあります。

 

飛び越えるには無理な高さであったり、きちんとやり方を教えてもらえなければ、全員がすんなりと達成できるわけではありません。サポートがないからできないだけなのに、努力が足りないなどと批判されるのはおかしいのです。とくにグレーゾーンの場合は、そこから新たな精神的なダメージやトラブルにつながるなど、二次的な問題を抱えてしまうこともあり、それでは本末転倒です。

大切なのは子どもをよく観察すること

 

子どもが乗り越えるべき課題がみつかったら、子どもと一緒に考え、うまく達成できるようにサポートしていくことが大切です。

 

そこで大事なのは子どもをよく観察していくことです。

 

例えば食事中に立ち歩きをしてしまうなら、まずは客観的に事実を見極めましょう。どんな状況でそうなるのかをよく見て、対処法を考えていきます。そこで注意したいのは「できないことはダメだ」などと主観的な評価や判断を入れないことです。

 

また、最近多いのは、親のほうが食事中にスマホばかり見ていたりすることがあります。それはなるべく避け、子どもと向かい合う時間をきちんともつことも大切です。