家族に通知するときは「伝え方」に注意
なお、ご家族に通知する場合に気をつけることがあります。産業医を始めとした医師に相談していない限り、“病気が疑われるので…”という話はしないでください。病気かどうかの判断は医師にしかできません。医師資格のない方が判断すると、“病人扱いされた!”との不満感を与え、しこりを残してしまう場合があります。
では、どのように通知すればよいのでしょうか?
ここで、前回ご紹介した“頑張りすぎな人に現れる「危険信号」”のうち、定量化しやすい15項目を取り上げます。
これらをより具体的に把握し、たとえば「全15項目のうち8項目も当てはまっている」というように、数値で表現してもらうようアレンジしてください。
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□仕事の能率が低下した
□仕事のミスが増えた
□イライラしがちで、ちょっとしたことでも腹を立てている状況にある
□決断力が低下している
□物事を悪いほうに考えたり、捉えたりする傾向に陥っている
□自分を責める、あるいは他人に責任転嫁しがちになっている
□仕事中の居眠りがみとめられる
□整容(洗顔や整髪、髭剃りなどの身だしなみ)が不足するようになった
□新聞や社内回覧雑誌、書類が停滞している
□机の上や作業場が散乱している
□“眠い”、“疲れた”といった発言に代表される意欲の低下がみられる
□声をかけると“心配ない”、“大丈夫だ”と、か弱い声で答えるので、かえって心配を募らせている現実がある
□他人が心配すると、“休むと、かえって仕事がたまる”、“私がやらないと誰もやってくれない”と、無理に出勤しようとする困った状況にある
□遅刻や早退しがちな現実がある
□無断欠勤する
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また、数値で定量化した内容を根拠にすると、話は通じやすいものです。
最後の2つは、合わせ技にすることが可能です。たとえば所定労働日数を分母に、欠勤は1、遅刻か早退は0.5としたうえで、分子には所定労働日数からこれら欠勤や遅刻、または早退した日数を減じた数で示す勤怠率を求め、それを折れ線グラフや棒グラフにする、という手法もわかりやすい表記方法です。
こういった数字は、会社であれば人事労務担当者が把握しています。その人事労務担当者や産業医、産業医がいない場合には、「衛生管理者」や「安全衛生推進者」(いずれも会社で安全衛生を担う、労働安全衛生法で定められた資格です)より「会社として当人の体調を心配していて、無理に仕事をさせられる状況にない」という旨を、ご家族を筆頭とした緊急連絡先や身元保証人に伝えてもらうよう提案してみてください。
こういった配慮や支援があると、身元保証人であるご家族からも、主治医に相談しやすくなります(何しろ辛さを抱えるご本人は、自身の状況について、理路整然と根気よく説明するだけの気力も体力もありません)。
なおご家族主導で、生活記録表をつけてもらう方法もあります【図表】。通院先の医師に提示することで、その医師も、当人の体調を個別具体的に把握しやすくなります。毎日、その日の体調や気分、熟睡度、食欲といった項目について、一番良いときをプラス10、一番悪いときはマイナス10として、記録し始めてもらいましょう。
一般的に通院を促しやすくする言葉かけは以下になります。
「一緒についていくから」
「医者から“心配ない”と言ってもらったら、あなたも、みんなも、安心するよ」
こうした声かけをしながら、一緒に通院(同伴通院といいます)してください。
いわゆるうつ病(専門用語では抑うつ性障がい)になると判断力や決断力が低下します。そのため、支援者が意識するポイントは、調子が悪くても決められた日時に通院できるような支援を提供することです。具体的には、調子が悪いのであればタクシーを呼ぶなど、早め早めの支援が大切です。