生涯現役、そして「高齢期に相応しい家や環境」の確立
(5)社会的・市民的義務を果たすこと
収入になる仕事をする、ボランティアをする、地域の活動に参加するなど、何らかの形で社会参加をすることです。先ほど紹介した「プロダクティブ・エイジング」のように、高齢者は現役を退いたとしても自立を続け、その能力を活かして生産的な活動、社会貢献活動に参加すべきだという考え方です。「生涯現役」に近いイメージです。
(6)身体的に満足できる生活環境を確立すること
若い頃のままの生活環境は、高齢者にとって危険であったり、不都合が多くなったりするから、高齢期に相応しい家や環境に身を置くようにしなければならないという課題です。若い頃には気にもならなかったことが高齢期には苦痛になったり、場合によっては大きな事故につながったりします。
自立生活を継続するためにスーパーや病院や金融機関などが近くにあるかどうか、段差や坂道がきつくないか、居室や浴室などに大きな温度差がないかどうか、庭の手入れが大変ではないか、体調の急変や事故、災害などの際に手助けをしてくれる人がいるかどうか等に注意し、問題があれば住み替えも検討すべきということです。
これら六つの課題は現代の日本にも十分に通用します。高齢期を幸福に過ごす前提として、チェックリストにしてみるのもいいかもしれません。
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川口 雅裕
NPO法人「老いの工学研究所」理事長。 1964年生。京都大学教育学部卒。 株式会社リクルートコスモス(現株式会社コスモスイニシア)で、組織人事および広報を担当。 退社後、組織人事コンサルタントを経て、2010年より高齢社会に関する研究活動を開始。約1万6千人に上る会員を持つ「老いの工学研究所」でアンケート調査や、インタビューなどのフィールドワークを実施。高齢期の暮らしに関する講演やセミナー講師のほか、様々なメディアで連載・寄稿を行っている。 著書に、「だから社員が育たない」(労働調査会)、「速習!看護管理者のためのフレームワーク思考53」(メディカ出版)、「実践!看護フレームワーク思考 BASIC20」(メディカ出版)、「顧客満足はなぜ実現しないのか」(JDC出版)、「なりたい老人になろう~65歳からの楽しい年のとり方」(Kindle版)がある。