製薬会社とも続いていた「癒着」
また、以前までは製薬会社から依頼があった「講演」や「監修」・「記事執筆」などが大きな収入源となっていました。
また、各大学医局が特定の製薬会社の製品を推奨する見返りとして、莫大な教授への謝礼と、医局への「奨学寄付金・研究費」という名目の収入がありました。製薬会社にもよりますが、出費の70~80%がこうした謝金として計上されていたのです。
ご存知の通り、特定の大学病院の医師と製薬会社の癒着に関しては各種メディアや小説などが「深くゆがんだ関係」としてたびたび取り上げてきましたが、十分な規制はありませんでした。
同時に、税金で支払われている製薬企業の資金が大学医学部や権力のある医師に流れ、医療のゆがみも指摘されていました。教授レベルの講演では、旅費と併せて100万円を超える支給がされていたことも日常茶飯事でした。
悪質なデータ改ざん…2013年に発覚した「ディオバン事件」
こうした大学医局などへの「奨学寄付金」が“見えない力”となって、高血圧の製薬製品データ改ざんが発覚したのは2013年。ノバルティスファーマが販売していた「ディオバン事件」です。薬の効果を大きく見せるため、検査データへの意図的に改ざんが行われ、各大学に「約10億円」の奨学寄付金が支払われていたのです。
結果としてディオバンの売り上げは1,000億円を超えましたが、ディオバンに関連した論文は撤回されることとなりました。
こうした情勢から、日本においても米国を見習い、製薬会社に倫理規定が定められ、どの医師にどれだけの謝礼を支払ったかを明確に報告・公開する制度が導入されました。
日本製薬工業協会は2011年に「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」を策定し、2014年からは製薬企業から医師や医療機関に支払った1年間の金額を公開しています。
講演会の謝礼や原稿執筆料、監修料、コンサルティング料など、医師個人への支払額も明らかとなり、“高額報酬”は一部の大学教授・学会の幹部に集中していることがわかりました。
しまいには、報酬額も以前より相当な減額となりました。
このほか、「法外な結婚式のスピーチの報酬」も存在しますが、製薬会社からの報酬以外については税収の客観的な証拠がないため、税務側も調査に踏み切ることが困難なのが現状です。
20年前と比べ、現在では医学部大学教授の金銭面での旨みは激減しました。とはいえ、「医療体制をよくしたい」「後進を育てたい」「研究を患者さんにフィードバックしたい」という純粋で志の高い医師が、教授に就任して活躍されることを、切に願います。
武井 智昭
高座渋谷つばさクリニック
院長
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