当たり前だった…学位取得のための「謝礼金」
2004年の新臨床研修制度(初期2年間の必修化)までは、多くの医師は大学医局の診療科に入局して、医師のキャリアをスタートさせました。医局によってルートは異なりますが、大学で1~2年間、その後は大学の関連病院で2~3年修行してから、再度、大学病院あるいは各科の中核施設(がんセンター等の大規模な医療機関)に戻ります。
医師として5~6年目になると、各科の学会が定める専門医試験を受験し、医局のなかにある「研究班」に所属して、論文作成のための研究を始めます。「各科で専門を決める」という、いわゆる通過儀礼です。
そして、この時点あるいは研究を始めて2~3年のタイミングで大学院博士課程に進学し、卒業時に「医学博士号」を取得するように指導されます。
この医学博士を取得するために、医局全体で研究・論文執筆・学位取得のためのサポートが行われます。私立大学では特に、この学位取得に関する「金銭授受」が顕在化していました。
若手医師の井戸端会議では「学位の謝礼で、いくら渡したの?」というような話題が、同じ医局内や他の医局・大学でも頻繁に行われていたのです。
「学位取得、おめでとう!」当人より教授のほうが喜ぶワケ
大学ごとに異なりますが、医学博士の学位論文審査は「主査」と呼ばれる主任教員1人、「副査」と呼ばれる副主任教員1~2人が担当します。論文を提出したあとはプレゼンテーションが実施され、研究成果を報告。主査と副査が公聴会で質問し、質疑応答に問題がなければ学位が授与される、という流れでした。
無事に学位取得となった際の喜びは、実は当人以上に主査・副査の先生のほうが大きいのです。なぜなら、その時点で高額な金銭授受が確定するからです。
前述の井戸端会議では
「うちの科は教授には50万円、副査の先生には10万円かなあ」
「こっちは主査に30万円、副査全員に20万円だった」
という会話が日常的に繰り広げられていました。
「指導への謝礼の意味だとはわかるものの、お金が絡む学位取得はやはりよくない」と慣習を疑問に思う医師もいましたが、一方で金に目がくらんだ教授は、学位を取得した若手医師が50万円の謝礼金を高級和菓子のなかに忍ばせ教授室へ持参したところ
「これは、僕の分だよね。妻の分はないの?」
「もし今日中に用意できなければ、来週から〇〇病院に異動してもらうからね」
と微笑み、凍りついた若手医師は慌てて駅前の銀行へ。新札50枚を下ろし、追加の高級和菓子を用意しました。
公立大学でも、同様の慣習が暗黙の了解のもと行われていました。
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