住宅市場活況の一方で…増加する「ローン破綻」予備軍
住宅市場が活況だ。2022年3月の公示地価は住宅地の全国平均が前年比0.5%上昇。ここ数年はコロナ禍で外出自粛やテレワークが増えたことで、「より快適な空間」や「もうひと部屋」を求める人が増えたことが挙げられる。
一方、住宅ローンで困窮する世帯が増えるリスクも高まっている。
日経新聞によれば、2020年度の住宅ローン完済の平均年齢は2000年度の68歳から5歳延びて73歳になり、ローン開始年齢も37歳から40歳となった※。しかし、そんななかで利用者はどこか楽観的にみえる。その背景について、FP相談の現場で感じる4つの傾向から考察してみたい。
※ 参考:住宅金融支援機構
住宅ローン相談者の「定番4条件」
最近の住宅ローン相談者は、
②「変動金利で借りる」
③「頭金は最低限」
④「繰上返済は考えない」
……という4点セットが多い。
特に①・②は規定事項のようにほとんどの方が口を揃え、②は実際のデータでも8割弱を占める。
理由を尋ねると、①「短く組んで払えない時期があると困るから」。②は「金利は長年上がっておらず、変動のほうが返済しやすいから」。③は「頭金を入れるより、多く借りてローン控除を受けたほうが得だから」、④は「低金利なら繰上するより、投資に回した方がいいから」。おおむねこのような回答をいただく。
これら4つの考え方はFPとして利用するアドバイスの1つであるから、否定するものではない。ただし、問題は「リスクも踏まえて」選択しているかどうかだ。
筆者は10年ほど前まで住宅の営業現場で勤めていた経験があるため、以前とのギャップを感じる。当時は40代半ばともなれば借入期間は20~25年で組む方が珍しくなかった。変動金利で組む方は同様に多かったが、固定金利を安心材料に選択する人も一定数いた。頭金は最低限準備すべきという意識があり、35年ローンで組むなら定年までに繰上できないかを気にしながら借りる……といった様子が普通だった。
ところが現在は、45歳の人も35年ローンで最長の80歳まで借りる、50歳なら30年という具合に「最長期間」が基本。金利上昇を心配する様子は薄く、頭金を出すより多く借りて減税と生命保険効果、繰上返済も考えない……という4拍子がスタンダードだ。
さほど迷いもなく見えるのでリスクヘッジも万全かと思い、「金利が上がった場合は」、「定年後の残債は」の対策も尋ねてみる。すると、実は具体策がなく「いまはみんなそうだと聞いたから」と、極めて日本人らしい集団心理の実態が見えてくるのだ。