リモートワーク普及などの影響で、住宅市場が活況です。しかしその一方、周りと足並みを揃えたつもりの「定番条件」で住宅ローンを組んだ結果、住宅ローン破綻予備軍に陥る人が増えていると、FP Officeの髙屋亮氏はいいます。「みんなと同じように」家を買ったはずが住宅ローン破綻に陥る原因と、回避するための対策について、詳しくみていきましょう。
年収800万円、45歳の会社員…「みんなと同じように」家を買って大後悔

長く借りたら、繰上できる「備え」も必要

また、「返済比率」も年功序列の時代に作られたものであり、変化の多い現代から35年後の未来を前年収入で審査することに制度疲労も起きているだろう。

※ 返済比率…年収に占めるローンの年間返済額の割合のこと返済比率は一般に20~25%程度が良好とされる。

 

前述の4,000万円/35年ローンについて、年収が800万円の場合、金利3%(返済総額6,465万円)での返済比率は23%となり、一見良好にみえる。しかし、近年の晩婚化で返済開始が45歳の場合はどうか。65歳以降の年金収入が夫婦で月30万円だとすると、ローン15万円/30万円で比率50%へ急上昇する(実際の返済金利が0.5%でも比率35%)。しかも、それが80歳まで残っている。

 

一方、年収500万円で計算すると比率35%オーバーなので審査上は厳しくみえるが、返済開始が30歳だとしたらどうだろうか。45歳時点の残債は2,370万円まで減っており、あと20年返済すれば繰上しなくても65歳に完済する。

 

後者の場合、若いうちは節約も必要だろうが長期ではむしろ健全といえるのだ。

 

「買える・買えない」は本人意向と計画次第

40代以降の住宅ローンを反対するのではない。"4点セット"で目先の負担を和らげて終わりにせず、リスクを知ったうえで必要な対策や適正額を把握するべきではなかろうか。

 

たとえば「40歳。頭金はナシだが家は必要、ローンも60歳に終えたい」という方は、支出過多が予想されるためにまず第一は家計分析。仮に余剰支出が年100万円あるとわかり、それを家のために「繰上つみたて」として変換できるなら、前述の35年ローンで当面は負担を和らげつつ、20年後には2,000万円の完済資金ができている。全額つみたてに回せないとしても、NISAやiDeCo等で年利回り4%を期待するとしたら、20年で元本1.5倍の資産形成も可能だ。

 

顧客本位なFPとライフプランを

近年すっかり定着した「不動産業者経由のFP相談」もあるが、経験上これも注意が必要だ。基本的には住宅資金の不安を解消することが目的となるため、FPも購入を手伝うアドバイスになりやすい。

 

本当にフラットな見解を知りたい場合は、商談前にしがらみない独立系のFPに相談するほうが有効だろう。客観的な住宅予算はもちろんのこと、そもそもの持ち家・賃貸の長短も相談できる。

 

持ち家は希望の住まいにお金を投下して不動産資産をつくれるが、日本では保有での災害リスクもある。賃貸は身軽に転居でき、修繕費・固定資産税・火災保険などの諸費用が不要なメリットもある。プロフェッショナルなFPなら、そういった両論で顧客が納得する選択肢の提供に努めるだろう。
 

すべては各世帯の形態や収支によって異なる。世の常識に同調する前に自分の感性と向き合い、信用できるFPを外部知見に活用し、自身が納得の人生をプランニングしていくことを推奨する。

 

 

髙屋 亮

FP Office

ファイナンシャルプランナー