リーキーガットとリーキーブレイン
今日、様々な検査診断ができるようになり、先ほどの未消化物が血液中から検出されることもわかってきました。
腸は本来、必要な栄養素をキャッチし体内に取り込む一方、不要なものはそのまま通過させ、大便として排出するようにできています。
しかし血液中に余計なものが検出されるということは、先ほどの血液脳関門と同じように、フィルターが破綻している状況が腸にも起きていることになります。
これが俗にいうリーキーガット(正式には腸管壁浸漏〔ちょうかんへきしんろう〕症候群と言います)で、本来強固に結合しているはずの腸の細胞同士が炎症などで緩み、リークしている状態です。
またカンジダというカビが過剰な糖質をエサに増殖すると、腸壁を貫通するように根を生やすので、同じくリーキーガットになります(図表2)。
このときゾヌリン(図表3)という物質が腸から血液中にも放出されるのですが、この量が多いと前出の血液脳関門も障害される可能性が上がります。俗に言うリーキーブレインです。運悪くそこにP.g菌が流れてくれば、ジンジパインの力と相まって、脳内に流入することになってしまいます。
以上はまだ仮説の段階ですが、論理的に説明できるだけに、アルツハイマーや不定愁訴の解決や予防に真剣に取り組む医師の間ではよく知られていることです。
「生きた菌」も「死んだ菌」も体に影響を与える
さて腸にまで達した口腔内細菌はどうなるのでしょう。
腸内にはよく便宜上、善玉・悪玉・中間の3種類の菌がいると言われます。それらの総重量は1~1.5kgもあり、人体に必要な栄養素を作ったり免疫を担ったりと、一つの臓器と言っていいほど重要な役割を持っています。
口腔内細菌はだいたい、腸内では悪性に働き炎症を起こしますので、リーキーガットの一因になっている可能性があります。
するとその量は少ないほうがいいので、歯磨きで細菌数を必要以上に増やさないことは、胃腸を助ける意味でも重要です。
さらによく噛むことで食材を粉砕すれば、胃酸や消化酵素との接触面積が上がり、未消化物を減らすことができます。
それと同時に、善玉菌は日常的にどんどん追加していきたいところです。昔の食生活なら、味噌や漬物から善玉の代表格である乳酸菌を摂取することができました。
しかし最近は漬物を食べる機会が少ないばかりか、あってもそれは漬物風味の調味料に浸した野菜が多く、乳酸菌の供給源としては期待できません。ちゃんとした味噌汁を飲む機会も少なくなっています。
そこで市販されている乳酸菌やビフィズス菌製剤の出番になります。
このときよく議論になるのが、「生きた菌でなくては意味がない」「生きた菌を飲んでも胃酸で死滅するから意味がない」という相反した理論です。
しかし実際にいろいろ使っていただくと、生きた菌も死んだ菌も、両方とも効果があります。結局はどちらでもいいようです。
そうすると、以下のような疑問が沸きます。
死んだ乳酸菌でもいい効果があるということは、胃酸で死んだ口腔内の悪性菌の残骸でも腸に悪影響があるのでは、ということです。
するとその量はできるだけ少ないほうがいい、したがってたとえ胃酸が十分であっても、やはりよく歯を磨いて胃に落ちる細菌の量を減らすことは全身の健康のためにとても重要、とならないでしょうか。