昨今、ロストジェネレーションとも呼ばれた「就職氷河期世代」に注目が集まっています。当の本人たちのなかには、「時代が悪かった」と運の悪さを強調する人も。実際に「就職氷河期」はどれほど悲惨なものだったのでしょうか。みていきましょう。
40代で手取り16万円…脱落し置いていかれた「氷河期世代」の悲惨な現在 (※写真はイメージです/PIXTA)

問題は氷河期からこぼれおち、置き去りにされた人たち

少々、行き過ぎたイメージのある氷河期世代ですが、就職活動が厳しかったことは確かであり、不本意な就職をした人が多かったのも事実。ただ与えられた環境で、キャリアアップを目指し、いま活躍している人も多い世代、それが氷河期世代だといっていいでしょう。

 

ただそれは氷河期世代の光の部分といっていいでしょう。この世代に限らず、必ず影の部分はあるもの。それがいまなお、非正規社員に甘んじている人たちです。

 

厚生労働省『労働経済動向調査』によると、常用労働者の過不足判断D.I(人手が足りない企業から、人手が足りている企業を引いた値)は、1998年ごろからマイナスに転じ、人手余りの状態に。2004年以降はプラスに転じ、雇用環境は好転していきます。

 

この時点で、「雇用環境が良くなった、よし正社員を目指そう」と行動できたら良かったのかもしれません。しかし正社員を目指した人すべてが願いを叶えられたわけではありませんし、また非正規社員でもタイミング的に転職が難しいというケースもあったでしょう。

 

さまざまな事情から機会を逃すとどうなるでしょうか。たとえば30代になれば、それなりのキャリアが求められるようになります。なかにはマネジメント経験必須というケースもあるでしょう。そのようななか、30代にして正社員の経験のない、非正規社員は大きなハンデを抱えることになります。「就職しにくい」という問題が年を重ねるごとに深刻化していくのです。2019年に内閣府が発表した『就職氷河期世代支援プログラム関連参考資料』によると、非正規社員371万人のうち50万人が、正社員を希望しながらも非正規社員として働いているとされています。

 

40代前半、非正規社員の月収は中央値で21万円、手取りで16万円ほど*。40代になっても大卒新卒者と変わらない程度の給与という、悲惨な状況にいます。

 

*厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より算出

 

終身雇用制に年功序列……日本型の雇用形態が当たり前だった時代は、始まりがすべてでした。しかしいまは、その気になればいつでもチャンスが掴める時代とされ、転職でキャリアアップも当たり前といわれています。しかしそのようなチャンスさえ掴むことができないのが、就職氷河期からこぼれおち、そのまま置き去りにされた人たちなのです。

 

いまこのような人たちを救おうと、内閣府による「就職氷河期世代支援プログラム」や、厚生労働省による「就職氷河期世代活躍支援プラン」など、さまざまな支援制度が設けられています。ただ40~50代、限られた人たちの就職支援が、どれほど社会に好影響を及ぼすのか疑問の声は大きく、彼らよりもより若年層への支援に予算をかけるべき、という声が大きくなっています。

 

課題山積の日本で、やはり氷河期世代は置き去りにされるしかないようです。