賃上げ交渉…個人で行う海外、労働組合に託す日本
一方、海外に目を向けると、2021年1月にGoogleの親会社、アルファベットで初めての労働組合が発足するなど、GAFAでも労働組合を結成し、待遇改善を目指す動きが広まっています。
そもそも日本と海外とでは、労働組合のあり方が少々異なります。日本においては、その多くが企業別組合。一方で海外では産業別組合が主体です。
また日本では特にバブル経済の崩壊以降、労働組合の役割は労働者の権利を実現していく組織というよりは、企業と労働者との単なる調整役を担う存在に。企業別の組合がゆえに、経営陣への忖度が生まれ、結果、企業の言いなりと批判されることもしばしば。そこには賃上げ交渉の機能はないといってもいいでしょう。
一方、海外では業界別に横断した組合なので、経営陣への忖度など必要なく、自分たちの主張を思いきり行える、というわけです。
さらに私たち自身の賃金、そのものに対する考え方の違いも。日本では賃金の決定に関してはブラックボックスというケースが多く、賃金決定のメカニズムを理解している人はほとんどいないといっていいでしょう。そのため賃金に対して主張する、という人も少数派。
一方で海外は入社時も入社後も賃上げの要望を個人でしていく意識が高いとされています。日本、アメリカ、フランス、デンマーク、中国の「入社時の賃金交渉とその結果」についてまとめた、リクルートワークス研究所による「5ヵ国リレーション調査」(2020年)によると、「希望が叶った(「自分から希望を伝え、それが叶った」「会社から額を提示された後に、自分の希望を伝え、それが叶った」の合計)」のは、「日本」は20%。他国は50%前後と、日本の2倍以上という状況です。
このような結果は、日本特有の年功序列制や終身雇用制といった雇用形態や文化の違いなどによるとされています。帰属意識が求められる日本の会社員。個人で声をあげるのは憚れるので、代わりに労働組合が主張する……これが恒例の春闘だというわけです。
しかしいまや労働組合に期待されていた機能は失いつつあります。賃上げ4年ぶりの高い水準というニュースの影に、この日本で恒常的に賃金があがっていくことは諦めざるをえない、という絶望があるのです。