現役時代に認知症を発症した人は、全員、会社を辞めた……
さらに東京都による『若年性認知症の生活実態に関する調査』(平成31年3月)で、若年性認知症と診断された人たちの実態をみていきましょう。
そもそも最初に気づいた症状はどのようなものだったのでしょうか。最も多いのが「物忘れが多くなった」で57.5%。「職場や家事などでミスが多くなった」42.5%、「怒りっぽくなった」22.5%と続きます。そして最初の気づきから受診まで、「1ヵ月未満」が最も多く36.4%。「1~3ヵ月未満」が31.8%と続き、多くが自身の違和感から早めにアクションを起こしています。
若年性認知症と高齢者の認知症、最大の違いは、若年性は現役世代だということ。同調査では若年性認知症と診断された人のうち、発症前と同じ職場で働いている人はゼロ。「解雇」14.3%も合わせると、7割近くが「退職」の道を歩んでいます。また「転職」も14.3%を占めています。そして世帯収入は52.5%が「減った」と答えています。
またローンについては、75%が「なし」と回答する一方で、10%が「住宅ローンの返済あり」、5%が「教育ローンの返済あり」「車のローンの返済あり」と回答。家計については25%が「苦しい(とても苦しい、やや苦しい」、50%が「何とかまかなえている」と回答。苦しい台所事情が垣間見ることできます。
コツコツと勤め上げ、給与も順調に増えてきた。引退後の悠々自適な生活を見据えて……そんなときに認知症と診断され、会社にいることが難しくなったとしたら。その事実に、そしてその先の生活への不安で押しつぶされてしまう、そんなケースも珍しくないようです。実際に認知症と診断された人のなかには、うつなどを発症するケースも多いといいます。
認知症で働くことができなくなった場合、年金受給年齢に達していれば、老齢年金と介護保険の両方を使って生活していくことができます。
では一家の大黒柱となっている存在が働けなくなった場合はどうでしょうか。健康保険の加入者であれば、最大1年半の間は傷病手当を得ることができます。その期間が過ぎてしまった場合は、障害年金に切り替えて生活を支えることが可能。若年性認知症については、さまざまなサポートがあります。本人も家族も、そこまで悲観する必要はありません。