急激な物価高で、買い物をするたびにため息が止まらない今日この頃。なかでも年金だけが頼りという高齢者は、その影響が甚大でしょう。生活苦に陥り、とうとう、犯罪に手を染めてしまうケースも。みていきましょう。
年金月10万円「ほんと、お金がない」…生活苦の高齢者が越えてしまった一線 (※写真はイメージです/PIXTA)

困窮する高齢者が犯してしまう罪

もしかしたら、生活保護などの支援を受けられている高齢者は、まだましかもしれません。生活困窮者への支援で難しいのが、そもそも申請の仕方が分からないというもの。声をあげずには支援を受けることができませんが、声のあげ方さえ分からないのです。

 

また生活保護の制度に対するネガティブな印象から、申請をためらう人も多く、必要としながらもなかなか支援が行き届かない現状があります。そんな生活に困窮する高齢者のなかには、一線を越えてしまう人も。

 

高齢者の犯罪のなかで最も多いのが万引き。高齢化を特集した法務省『平成30年版犯罪白書』によると、高齢者の刑法犯検挙人数は4.6万人。万引きによる検挙人数は全世代平均で30.8%に対して、65~69歳の高齢者では43.1%、70歳以上では64.6%を占めます。特に女性の割合が多く、65~69歳では刑法犯検挙人数の69.5%を、70歳以上の82.5%を万引きが占めています。

 

万引き検挙人数自体は近年大きく減少傾向にあり、高齢者についても2020年の検挙人は2万1,221人で、微減が続いています*。ただその下げ幅は他の世代に比べて非常に緩やかで、万引きが高齢者が手を染めやすい犯罪だといえるでしょう。

 

*警視庁『刑法犯に関する統計資料』より

 

なぜ、高齢者は万引きに手を染めてしまうのか。「社会的な孤立」「認知症」など理由は考えられますが、やはり大きいのは「生活困窮」といった経済的な問題。実際、万引きの犯行動機として「お金を払いたくない」が33.0%、「生活困窮」が30.0%と、経済的な問題をあげています*。

 

*東京万引き防止官民合同会議『万引き被疑者等に関する実態調査分析報告書』

 

さらに日本人の長寿も理由のひとつだと指摘する声も。老後が長くなると、たとえ十分な余裕があったとしても「お金がどんどん減っていく」というのを目の当たりにし、節約から犯行に及んでしまうケースもあるといいます。

 

日本人の給与が上がらないことが度々話題になっていますが、このままでは生活苦に見舞われる高齢者はさらに増えていくことが予想されます。それによって、微減傾向となっている万引きに手を染めてしまう人も増えてしまうかもしれません。

 

語感から軽犯罪と考えられがちな万引きですが立派な犯罪。せっかく人生頑張ってきたあとに、このような哀しい犯罪に手を染めなくてもいいように、現役世代への支援もまた必要だといえるでしょう。