つまずく理由②読解力不足
文章題が解けない理由は他にもある。問題を読んで理解する読解力が足りていないということだ。答えを求めるための式を立てるには、まず問題の意図するところを読み取り正しく式に表す必要がある。計算問題なら解けるのに文章題は解けないというタイプの子どもの多くは、この式に表すというプロセスでつまずいている。これは正しく問題文が理解できていないからなのだ。つまり、足りていないのは計算力よりも読解力ということになる。
■そもそも「問題文をよく読んでいない子ども」も…
さらに、読解力だけでなく問題文をしっかりと読む必要性を認識していない子どもも多い。与えられた値から何となく式を立てて解いてしまっているのである。算数だけに限らず社会や理科などの問題でも暗記した単語を解答し、条件に合致していない例はよく見られる。
あるとき、私の教え子である山本(ブライトフューチャーアカデミー元生徒、東京大学入学後は講師として指導中)が、「生徒のAさんは理科の実験問題がいつも苦手なのですが、問題をよく読もうねというと正解できるんですよね。社会でも問題の条件に合わない解答が多くて」と言っていた。その生徒は国語は得意で読解力もあるのだが、理科や社会の問題になると暗記した単語や知識のみで解答しようとしてしまうのだ。このように、問題を解くときは常に問題文をよく読む意識を持っていないと文章題で正解を導くことは難しいのだ。
文章題を克服するコツ
■どのプロセスでつまずいているのか?を明確にする
文章題は、問題を読む→理解する→式を立てる→式を解く→条件にあった解答を書く、というプロセスを経て解く。したがって、文章問題を解けるようにするためにはどのプロセスでつまずいているのかを明確にしながら学習する必要があるのだ。
最初のプロセスをクリアするためには、いかなる問題であっても問題をきちんと読むことを子どもに習慣づけさせることが必要である。山本によると、先ほどの生徒も答え合わせのときに講師が問題文と解答条件の齟齬を指摘したり、初めから一緒に解いたりするのではなく、「しっかり問題文を読んでもう一度解いてみよう」と声をかけ続けることで少しずつ正答率は上がっているという。
習慣にするためには時間はかかるが、このように自ら読んで解くという癖をつけさせるほかないだろう。
次に、2番目のプロセスで問題文を理解できるようになるための読解力を身につける必要もある。これは日常的に本などで文章を読むことで身につけていく必要がある。また、間違えた文章題を解き直す際には、問題で述べられている状況を表や図に書けるかどうか試してみることも有効である。
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【例題】「A君は鉛筆を20本持っています。そのうち5分の2をB君にあげました。B君はA君からもらった鉛筆のうち3本をC君にあげました。B君の手元には何本の鉛筆がありますか。」
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この例のように図式化することができれば、文章の意味を理解することができていることが分かる。また、図式化することでイメージがしやすく、3番目のプロセスにおいて式を立てやすくなる。4番目のプロセスでは式を解くための計算力が必要となる。最後の解答においては最初のプロセスにおいて問題文を理解できているかが重要な鍵となる。
以上のように解答のプロセスのどの段階でつまずいているのかを確認しながら学習することが大切なのだ。
まとめ:継続は力なり
子どもは自分で解けるようになると、自然と笑みがこぼれ、目が輝き出す。つまり、本来最も大切である「解いてみよう」というワクワク感が生まれるのである。子どもがすでにつまずいていたり、もう今更やっても遅いと思ったりしている方は、一度どのプロセスでつまずいているかを学校の先生や塾の先生に聞いてみてほしい。一朝一夕には文章題を解く力を習得できるものではないが、「継続は力なり」である。
冨沢 拓夫
ブライトフューチャーアカデミー 代表
埼玉県立大学・神奈川大学 非常勤講師