(画像はイメージです/PIXTA)

受刑者と看守が共謀して脱獄した場合、日本ではどのような罪が成立するのでしょうか。銀座さいとう法律事務所・弁護士の齋藤健博氏が解説します。

アメリカで発生…「看守と共謀して脱獄」した事件

今年4月29日、アメリカ・アラバマ州にて、殺人の罪等で起訴され服役中の受刑者ケイシー・ホワイト(38)と元・刑務官ヴィッキー・ホワイト(56)が、共謀して刑務所から逃亡する事件が発生しました。

 

ヴィッキー・ホワイト元刑務官には脱獄ほう助の疑いで逮捕状が出されていました。5月9日には警察の追跡を受け、身柄を拘束される直前で自ら命を絶ったというショッキングな事件です。

 

現地の保安官は2人について「特別な関係にあったことを確認した」と発表しており、「刑務官が受刑者と恋愛関係となり逃亡を手助けするなんて、映画のようだ」と一部世間を騒がせました。

 

映画で見る恋愛物語のような話ですが、現実に凶悪犯が脱獄する、しかもそれを看守に手助けされてしまうという事態は、当然ながら非常に恐ろしいものです。

 

もしも日本で同様の事件が発生したとしたら、両者はどのような罪に問われることになるのでしょうか。

一部の国では罪にならないが…日本では何罪になる?

まず日本では、脱獄をすると「単純逃走罪」が成立します。さらに拘禁されている施設や器具を損壊し逃走した場合や、2人以上通謀して逃走した場合には、単純な逃走に比較して罰則の重い「加重逃走罪」の成立が視野に入ります。加重逃走罪が適用された実例も存在します。

 

日本では脱獄は「逃走の罪」とされますが、ドイツ・スイスなど欧州のいくつかの国では「罰から逃れようとするのは人間の本能である」という理由から“違法”とはされていません。日本人の感覚すると不思議に思えるかもしれません。“自由”についての考え方・文化の違いを感じさせられます。しかし、それでも手錠や壁を壊す行為があれば器物損壊罪に問われますし、脱獄を手助けする行為については違法とされます。

 

日本でも、脱獄を支援した刑務官がいた場合には、逃走援助罪が成立します。この犯罪は、看守や護送の任務を有する者がその職務に反していることを重視するものです。

 

現代の日本では、頻繁に脱獄が発生しているわけではないため、逃走援助罪が成立するような状況は想像しにくいかもしれません。

 

ただ、逃走を直接的に支援しなかったとしても、「逃走することを知っていながら、あえてこれを放置する場合」には『不作為』といって罪が成立する余地があります。未遂であったとしても処罰される犯罪であることに特徴があります。

 

 

齋藤 健博

銀座さいとう法律事務所 弁護士

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