厚生労働省によると、元会社員の年金受給額は平均月額14万6,145 円。都道府県別にみていくと、同じ日本とはいえ大きな地域差がありました。みていきましょう。
都道府県「年金受給額」ランキング…同じ日本でも「老後1,500万円の年金格差」の衝撃 (写真はイメージです/PIXTA)

老後30年の年金差1,500万円だが、現役時代の収入差は40年で7,000万円弱

老後30年で1,500万円強の年金差。前出の計算式から分かるように、厚生年金の受給額は給与によって差が生じます。神奈川県の平均推定年収は536万9,700円で、47都道府県中2位。一方「青森県」の平均推定年収は366万7,900円で、47都道府県中47位。両者の給与差は1年で170万円。社会人人生40年だとすると、6,807万円もの給与差になります。現役引退後も両者の間には大きな年金差が生じるわけですから、収入格差は一生涯といえそうです。

 

――でも地方はお金がかからないからいいんじゃない

 

そのような言葉も聞かれます。都会と田舎の生活費の差を、総務省『家計調査 家計収支編』(2021年)でみていきましょう。

消費支出の差をみていくと、神奈川県と青森県で、月々5万5,000円ほどの差。これは現役世代も含めた二人以上世帯の平均値なので、確実なものではありませんが、「地方のほうがお金がかからない」は本当。「生活費差>年金差」のため、都会の高齢者のほうが経済的負担が大きいといえそうです。

 

【「神奈川県」と「青森県」の支出の差】

・消費支出:245,117円/300,152円

・食料:69,503円/86,471円

・住居:13,232円/27,698円

・光熱・水道:28,051円/19,933円

・家具・家事用品:10,523円/11,581円

・被服及び履物:6,520円/9,486円

・保健医療:10,781円/16,613円

・交通・通信:32,379円/35,797円

・教育:5,273円/20,442円

・教養娯楽:19,092円/25,565円

・その他の消費支出:49,762円/46,566円

 

出所:総務省『家計調査 家計収支編』(2021年)より

 

では地方の高齢者は裕福かといえば、そういえるほど、年金がもらえているわけではないことは確か。そのような点では、都会も田舎もありません。

 

同調査で、共に65歳以上、無職の高齢者夫婦は、月々の赤字は1万8,525円。年金などの収入では生活費は賄いきれず、その分、貯蓄を取り崩す生活となっています。1年で22万円、老後30年で667万円が不足する計算です。

 

この結果は調査年により上下するので一概に「老後これだけのお金が足りない」とはいえません。「老後資金2,000万円不足問題」では2017年の同調査が参考とされましたが、その際は、月々の赤字額は5万円を超えていました。

 

あくまでも統計上の話で「都会暮らしで年金だけで十分」という高齢者もいますし、「田舎暮らしで家計が火の車」という高齢者もいます。ただ「年金だけでは心許ない」というのは共通しているでしょう。

 

将来、年金制度がどうなっていようと、「年金だけでは足りない」という事実は変わらず、それに対する備えは必須でしょう。時間をかけてコツコツ資産形成を進めるなら、預貯金のほか、iDeCoやつみたてNISAといった制度を活用するのも手。まずは少額から、時間をかけてお金を増やしていくことが、私たちにできる最善の防御策といえそうです。