「ローン破綻で家を売るしかないのに売れない」…その理由とは?
40代会社員、手取り30万円で、月々の住宅ローン返済額は9万5,000円ほど。平均値で計算すると、無理のない返済プランといえそうですが、家計は人それぞれ。昨今は住宅価格も高止まりしていますし、少々無理な返済計画を立てているケースも珍しくないでしょう。
会社員である以上、所得は勤め先によりますし、なかには業績不振で給与減、さらには倒産で失業、ということがないとはいいきれません。さらに子どもの教育費、親の介護費など、想定以上の出費が家計を圧迫するケースも。
「いよいよ住宅ローンが払えなくなってきた……」
そうなると、せっかく購入したマイホームですが、売却して住み替え、という選択が有力候補となるでしょう。ただやっかいなのが「オーバーローン」。これは住宅ローンの残債が不動産の売却価格を上回っている状態のこと。家を売った金額だけで住宅ローンを完済できない場合、残りの金額は貯蓄などで払わないといけません。なぜなら、残債を完済したうえで、金融機関による抵当権を抹消しないと、家は売ることができないからです。
「ローンは払えないし、家も売ることができないし……」
そんな八方塞がりの状態になったら、「競売」が現実味を帯びてきます。競売は担保物件を強制的に売却する手続きです。担保権者が貸し付けた金額を回収できないと判断した場合、担保物件を差し押さえ、協定的に売却し、そのお金を債権回収の金額にあてるというものです。
裁判所の司法統計によると、2021年、競売となった不動産は1万1,053件*。前年1万2,844件から15%ほど減少となりました。
*担保権の実行 としての競売等
競売による売却金額はローンに充当されるので、負債は減ります。ただ「競売はおすすめしない」というのが、専門家の多くが口にするところ。というのも競売の場合、相場の6~8割程度しか売れないというのが一般的。競売費用も差し引かれます。
さらに競売となると開札によって不動産の新しい所有者は決まり、早急に出ていかなければなりません。出ていかなければ強制執行となります。また物件情報は裁判所などで公表されることもネックです。
そのため、競売の前に「任意売却」の検討をするのも選択肢のひとつ。これはオーバーローン状態の不動産を、金融機関の合意を得て売却する方法。手間がかかりますが、競売よりも高い金額で売れる可能性があります。金融機関にしても、競売になってしまうと、普通に売却するより安い金額で売却することになるので、任意売却を認めてくれることが多いようです。
ただ任意売却によって競売への流れが止まるわけではなく、金融機関がNoといえばそこで終了。また任意売却ができたからといっても、結局はオーバーローンの状態で、借金は残ります。めでたし、めでたし、といった結末にはならないことは、任意売却でも競売でも変わりはありません。