以前は60歳で定年、そして引退というのが一般的でしたが、現在は65歳、さらにはその後も働き続ける高齢者が増えています。「仕事が楽しいから」「仕事は生きがい」……そんなポジティブな理由であればいいのですが、すべてがそうとは限りません。年を取っても働き続ける高齢者についてみていきましょう。
手取り10万円…70代でもバイトを続ける「貧困高齢者」の地獄

年金だけは足りず…アルバイト代を生活の足しにする、高齢者の生活

内閣府が行った『高齢者の生活と意識 第9回国際比較調査』によると、高齢者のおよそ45%が仕事を続け、全体の14%がパートやアルバイトでした。

 

また「今後も仕事をしたいか、続けたいか」の問いには、およそ4割が「したい・続けたい」と回答。ただ年齢別にみていくと、「仕事をしたい」が60代後半では51%だったのが、70代前半で42%、70代後半で25%と、年齢と共に「仕事は辞めたい」と思うようになります。

 

それでも「働き続ける理由」は何なのかといえば、ずばり「収入がほしいから」。70代前半で46%、70代後半で36%と、「生活のために働き続けなければならない」という高齢者の実態がみえてきます。

 

厚生労働省『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1号)受給者の平均受取額は月額14万6,145円。さらに受取額の分布をみていくと、厚生年金では月10万円未満が23.3%。元・会社員といっても4〜5人に1人は、月10万円にも満たない年金しか手にできません。

 

もちろんライフスタイルや貯蓄の状況にもよるので、月10万円以下の年金でも十分という人もいます。ただこれで安心できるかといえば、心許ない、というのは恐らくすべての人が感じるところでしょう。

 

そうなると、たとえ70歳を超えても、たとえばパートやアルバイトとして「働けるうちは働く」という選択になるでしょう。

 

70代以上の男性パート・アルバイトの平均時給は1,533円、1日当たり5.4時間働き、1ヵ月当たり15. 4日働き、月に12万7,000円ほど手にしています。もちろん、そこから税金などが引かれますから、手取りはおよそ10万円です(厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より)。

 

年金だけでは苦しいからと、働き続ける高齢者。ただ働くことが困難になったとき、その先がどうなるか、想像することさえできません。年をとっても働き続けられる環境を整備することも重要ですが、いつ仕事を辞めても暮らしていける、そのための整備も進めてもらいたいものです。