以前は60歳で定年、そして引退というのが一般的でしたが、現在は65歳、さらにはその後も働き続ける高齢者が増えています。「仕事が楽しいから」「仕事は生きがい」……そんなポジティブな理由であればいいのですが、すべてがそうとは限りません。年を取っても働き続ける高齢者についてみていきましょう。
手取り10万円…70代でもバイトを続ける「貧困高齢者」の地獄

定年は「60歳」から「65歳」、さらには「70歳」へ

現在、多くの企業で「定年60年」となっていますが、2013年「高年齢者雇用安定法」によって、定年は65歳へ引き上げられました。2025年4月からは定年制を採用しているすべての企業で「65歳定年制」が義務となります。

 

さらに2021年、改正「高年齢者雇用安定法」では、「70歳までの定年引上げ」「70歳までの継続雇用制度」などの措置を講じる努力義務が新設され、平均寿命が伸びるなか、働き続けたいという高齢者のニーズに応えるべく、環境の整備は着々と進められています。

 

そもそも定年60歳は、1986年「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の改正で企業への努力義務になりました。

 

1986年当時、日本人の平均寿命は、女性80.48歳、男性74.78歳。また前年の法改正で、年金の受給開始年齢は男性は60歳から65歳へ、女性は55歳から60歳へ変更になりました。

 

男性の場合、当時は「15年間の老後の暮らしがある」というイメージでしょうか。このときから、引退から年金受給開始までの5年のタイムラグを、どうすべきかが、ひとつの課題となったといえるでしょう。

 

よくあるパターンは、60歳で定年を迎えた後、嘱託社員など、契約形態を変えて働き続けるというもの。50代後半・男性正社員の平均月収は45万6,400円、推定年収は694万9,000円。それが60代前半だと、平均月収は37万0,500円、推定年収は529万9,500円と、およそ2割ほど収入は減少します。雇用形態は変わらないものの、役職が変わるなど、変化があるためと考えられます。

 

では正社員ではなくなったとしたら。60代前半・男性非正社員の平均月収は33万0,700円、推定年収は474万5,200円。収入はおよそ3割減となるのが一般的です。この収入減に対応したライフスタイルでなければ、定年を迎えたと同時に、あっという間に家計は火の車となるというわけです。

 

【男性会社員「正社員/非正社員」の推定年収】

  • 20~24歳:3,400,800円/2,590,500円
  • 25~29歳:4,284,900円/2,992,500円
  • 30~34歳:4,988,200円/3,057,600円
  • 35~39歳:5,602,500円/3,139,900円
  • 40~44歳:6,060,200円/3,225,300円
  • 45~49歳:6,428,300円/3,320,600円
  • 50~54歳:6,926,900円/3,446,700円
  • 55~59歳:6,949,000円/3,385,400円
  • 60~64歳:5,299,500円/4,101,600円
  • 65~69歳:4,384,700円/3,302,800円
  • 70歳~:3,915,900円/2,884,000円

 

出所:厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より算出

※数値左:正社員、右:非正社員

 

厚生労働省『令和2年簡易生命表』によると、男性の平均寿命は81.64歳、女性の平均寿命は87.74歳。「65歳定年」とすると、「引退後、15年間の老後の暮らしがある」といった40年ほど前の前提とも合った状況にあります。

 

今後、さらに寿命は伸びていく一方、さらに少子高齢化で労働力不足が懸念されています。「高齢者は重要な労働力」という側面もあり、70歳定年はさまざまな問題を解決する、いまのところの最善策といえそうです。