(※写真はイメージです/PIXTA)

近い将来に実施されるであろう税制改正によって、遅かれ早かれ贈与と相続の一体化、そして贈与税の基礎控除の廃止が想定されます。そんな時代に備えて、どのような相続税対策が考えられるでしょうか。本稿では、税理士法人レガシィ『「生前贈与」のやってはいけない』(青春出版社)より、暦年贈与の代わりになる「4つの対策」を解説します。

2. プライベートカンパニー(個人資産管理会社)の設立

■「年間所得600万円超の収益物件」がある場合に検討

アパートやマンションのような収益物件を持っていれば、プライベートカンパニー(個人資産管理会社)を設立すると相続税対策になります。ただし、会社をつくるための費用や手間がかかりますので、年間所得600万円を超えたら考えてみるといいでしょう。

 

たとえば親がアパートを所有して家賃をとっているとすると、通常はアパートの収入はすべて預金として親の口座に残ります。そのまま亡くなってしまうと、当然のことながら口座残高は相続財産となり、100%課税対象になります。

 

ところが、親の資産やアパートの収入をすべてプライベートカンパニーに移すと、相続の対象になる資産は、プライベートカンパニーの株式だけになります。非上場会社の株価は、会社の資産とイコールではありません。一般的に、会社の評価によって5割にも3割にも低く評価されることが多いので、相続税額も低く抑えることができるのです。

 

また、そのプライベートカンパニーの役員に配偶者や子どもを据え、役員報酬の形で少しずつ資産を移していくことでも相続税額が減らせます。

 

ただし、相続税対策で会社を設立した場合、事業の実態がないペーパーカンパニーとして税務署から相続税逃れと指摘される恐れがありますので注意が必要です。

3. 孫と養子縁組をする

■届け出1枚で認められる「強力な節税策」

資産家の家庭では、孫を養子にするという話がよくあります。子どもが健在であるのに孫を相続人とする方法で、「一代飛ばし」と呼ばれています。これは、相続税対策として大きな効果があります。

 

一番の効果としては、「親→子、子→孫」という2回の相続を、「親→孫」という1回にしてしまうことで、相続税を低くすることが挙げられます。単純に相続の回数が減るわけですから、相続税が減るのは当然のことです。

 

孫を養子縁組して相続した場合、相続税は2割加算されますが、それでも相続財産が多ければ多いほど節税になります。また、養子縁組をしたことで、それだけ法定相続人の数が増えることになります。法定相続人が増えれば、相続税の基礎控除額が増え、さらに法定相続人が増えることにより適用税率が低くなることによって節税につながります。

 

具体的には、実子が2人で資産3億円の人が孫を1人養子縁組にすると、相続税が1460万円節税になります。実子が2人で資産7億円では3260万円もの節税になります(相続税の2割加算は未考慮)。

                                                        

そんな強力な節税策が、養子縁組の届け出を1枚出しただけで認められるのですから、資産家にとってはこれほど使い勝手のよい方法はありません。

 

■「きょうだい間のトラブル対策」とセットで考えることが重要

同居している息子の妻を養子縁組したという話も耳にします。これは、親の世話や介護をしてくれたお礼の意味が込められている場合が多いようです。息子の妻は(あるいは娘の夫)は、いくら献身的に義理の親の世話をしても、法定相続人ではないために、そのままでは遺産分割を受けられません。そこで、息子の妻を養子縁組して、遺産の一部を分けようというわけです。

 

ただし、孫であっても息子の妻であっても、きょうだいの間でもめる確率は高まってきます。ほかのきょうだいには、必ず事前に説明して了解を得てもらわないといけません。遺言もセットにしてあげるべきです。

 

「きょうだいはもちろんだけど、一代飛ばしで飛ばされた子どもは不満じゃないの?」

 

そう思うのはもっともです。普通ならば「なんで私をスルーするんだ」とやきもちを焼いても不思議ではありません。ただ、資産家で「一代飛ばし」が定着している家では、その人も祖父母から遺産をもらっているはずです。そういう家風があるので、問題にならないのでしょう。

次ページ「相続税率が低い・かからない国」へ家族ごと移住

※本連載は、税理士法人レガシィ、天野隆氏、天野大輔氏による共著『「生前贈与」のやってはいけない 知らないと損する相続の新常識』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「生前贈与」のやってはいけない 知らないと損する相続の新常識

「生前贈与」のやってはいけない 知らないと損する相続の新常識

税理士法人レガシィ
天野 隆
天野 大輔

青春出版社

近い将来、贈与税が改正されるのでないか、として注目を集めている「生前贈与」。相続対策の王道ともいえる節税術が使えなくなる前に、「駆け込み贈与」をしようと考える人が増えています。しかし、単に贈与をすればいいわけで…

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