日本は先進国唯一の「住宅後進国」
タワマンのリスクについて考える前に、日本の建築技術は世界的に見ると、大きく遅れをとっているという前提を知る必要があります。
日本人は手先の器用さ、謹厳実直な国民性が功を奏し、家電に使用する電子部品の金属加工などを筆頭に、世界的に高い技術力を評価されてきました。
ですが、こと住宅に関しては先進国唯一の「住宅後進国」と揶揄されても仕方のない、側面があります。
具体的に何が大きく遅れをとっているかというと、「断熱性」「気密性」です。
それぞれを分かりやすく洋服で例えてみましょう。「断熱」は身体を温め、体温が下がらないよう保温するセーター。「気密」は雨風を防ぎ、身体の内外の空気の出入りを少なくするウインドブレーカーです。
ではなぜ?日本の住宅性能は低いのでしょうか。その理由の一つに、他の先進国に比べて、日本の「環境配慮意識の低さ」が挙げられます。
欧州各国はSDGs が叫ばれるずっと以前から環境配慮に関する法案に力を入れており、こと省エネ性能を高める施策においては、1980年頃から3~5年おきに適合基準をどんどん厳しくしてきた背景があります。[図表1]は、ドイツの省エネ基準強化の推移に日本の現行基準のレベルを表記したものです。
上記の図から、日本の省エネ基準は、ドイツの1984年と1995年の基準の間ぐらいのレベルにとどまっています。実質的には、平成11年基準といわれる20年以上も前に定められた基準のままです。
さらに、日本は基準値を設定していますが、「省エネ基準への適合」は義務化されていません。そのため、基準値に満たない、欧州では違法になってしまうレベルのものを建設することが可能です。
こうした要因から、日本の建築業界は「断熱性」「気密性」が発展してきませんでした。
一方で、1995年に発生した阪神・淡路大震災以降、「耐震性能」に関しては着実に力を伸ばしてきました。
では、日本の住宅は「寒さ」「環境配慮」の点では弱いが、「災害」には強いと言えるのでしょうか。埋め立て地や川辺の都市開発エリアにしばしば建てられるタワマンを例に、予測していきましょう。