教育費用「高校~大学合格まで1000万円超」も当然…壮絶な医学部受験生 (※写真はイメージです/PIXTA)

近年、新型コロナウイルスの影響で、多くの若者が先の見えない不安に駆られている。大打撃を受けた業界も少なくはないため、「手堅い職業」とされる医師の人気は未だ健在だ。しかし、医学部受験は決して容易な関門とは言えない。莫大な予備校費用がかかるほか、倍率も他学部を大きく上回る。そこで今回は、オンライン学習塾の経営者として、医学部を目指す学生たちの壮絶な受験生活について解説していきたいと思う。※本記事は、オンライン学習塾「ポラリスアカデミア」学長・吉村暢浩氏による書き下ろしです。

医学部受験の倍率は「国公立で約3倍・私立で約10倍」

文部科学省が発表した令和3年度の医学部医学科入試状況によると、昨年度の実質競争倍率(受験者数/合格者数)は国立大学医学部で3.19倍、公立大学で3.02倍、私立大学で10.14倍となっている(※1)

 

これは同年度の医学部医学科を含む全学部の倍率と比較しても明らかに高く(国立:2.40倍、公立:2.77倍、私立:2.55倍 ※2)、医学部合格がいかに難しいかが分かるだろう。

 

<参考>

※1 文部科学省『令和3年度 医学部医学科入学状況』

※2 文部科学省『令和3年度 国公私立大学入学者選抜実施状況』

 

■なぜ医学部が人気なのか?

これほどまでに医学部の倍率が高くなるのには理由がある。いくつかあるが、ここでは3つご紹介したいと思う。

 

まず1つ目は、入学定員の増加である。OECD(経済協力開発機構)の統計資料によれば、医師数が世界で最も多いオーストリアでは人口1,000人あたり4.9人の医師がいるのに対し、日本には人口1,000人あたり2.3人しかいない。超高齢化社会を迎えている日本では医師不足問題が深刻化している。そこで文部科学省は、地域の医師確保などの観点から医学部入学定員を増加させており(※3)、それに伴って受験者数も増加しているというわけだ。

 

次に、2つ目は就職難だ。2008年のリーマンショック以降、大学生の就職活動は景気に大きく左右されている。さらに近年は新型コロナウイルスの影響で打撃を受けた業界も多い。特に飲食や観光といった生活娯楽関連サービスは大きな打撃を受けた。こういった社会的な情勢の影響もあり、理学部や工学部志望の優秀な学生たちが安定した職業を求めて医学部に流れている。

 

最後に3つ目は他学部の人気低下である。医学部と同じ医療系学部である歯学部と薬学部は特に人気の低下が著しい。歯科医院の数はコンビニの数よりも多いと言われるほど歯科医師の数は増加しているため、独立開業後の業績不振を見越した受験生が歯学部から医学部に志望学部を変更する流れが見られている。また、薬学部に関しては2006年に6年制になって以降、受験者数を落としている。

 

<参考>

※3 文部科学省『令和4年度医学部入学定員増について』

高校~大学合格までの教育費用「1000万円超」も当然

■医学部専門予備校の相場は「年間300万円~600万円」だが…

人気の医学部受験に挑むには、かかる費用も膨大だ。医学部予備校の授業料相場は、大手予備校が100万円以下・医学部専門予備校だと300万円~600万円かかる。中には年間750万円を要する予備校もある。

 

また、かかる費用は予備校代だけではない。医学部に進学する受験生のほとんどが中高一貫の私立高校出身であり、2022年の医学部医学科合格者ランキングを見ると5位の日比谷高校以外は私立高校であることが分かる(※4)。公立高校の年間学費が約46万円であるのに対し、私立高校は年間約97万円。高校3年間で考えると私立高校に通う家庭は約153万円も多くかかるのだ(※5)

 

さらに医学部受験には浪人が付きものである。他学部とは違い、3浪や4浪といった多浪も珍しくない医学部受験では、合格者の約71%を浪人生が占める。平均すると1.5浪かかる計算となり、さらに費用がかさむというわけだ(※6)

 

<参考>

※4 株式会社インターエデュ・ドットコムによる医学部医学科合格者数調査

※5 文部科学省『平成30年度子供の学習費調査』より、保護者が支出した1年間・子供一人当たりの学習費総額より金額を万単位で四捨五入して算出

※6 医学部受験ラボ『2020年度 合格者/入学者の内訳 現浪比ランキング』

 

■容易な志望校変更も難しい

医学部の入試問題は、同じ難易度の大学であっても特徴がまったく違うため、「A大学がダメなら、B大学にしよう」という軽い気持ちでの志望校変更は難しい。

 

たとえば、東京医科大学と順天堂大学の英語の入試問題を比較してみると、前者の問題は語彙や文法の知識を直接問う問題が一定数出題されるのに対し、後者の問題は第1問から長文読解が始まる。

 

大学によって求めている人物像や理念に違いがあるため、問題形式や難易度自体も大きく変わらざるを得ないのだ。

医学部受験の今後

前述の通り、今後の日本ではますます医師という職業のニーズが高まっていくと予想される。それに伴い医学部医学科の定員も増えるだろうが、それ以上に医学部志望者の人数が増えるだろう。

 

VUCA(ブーカ)時代と呼ばれる、先行きが不透明で将来の予測が困難な今の日本において、「安心・安泰の職業」である医師はやはり人気だ。だが、医学部受験は容易ではないこともご理解いただけたと思う。

 

予備校費用や私立高校の学費を考えれば、経済的に裕福な家庭でなければ医学部を目指すことすら難しいのかもしれない。なるべく費用をかけずに医学部に進学するためには、公立高校→国公立大学医学部のルートを歩まねばならないが、そのためには近年難化傾向にある共通テストで高得点を取った後、大学ごとの個別試験でも高得点を取らなければならない。さらに、医学部志望者のいない環境で自身のモチベーションを高く保ちつつ自学自習に挑まなければならないため、経済的に不利な家庭の医学部受験は今後もますます厳しくなってくると考えられる。

 

 

吉村 暢浩

オンライン学習塾「ポラリスアカデミア」学長

株式会社ポラリス 代表取締役

 

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株式会社ポラリス 代表取締役
オンライン学習塾「ポラリスアカデミア」学長 

2018年、京都大学工学部を卒業、同大学大学院に進学。2019年に京都大学大学院を退学し、受験コンサルティング事業「ポラリスアカデミア」を立ち上げる。2021年、株式会社ポラリスを設立。社会で勝ち抜くために必要な問題解決能力を大学受験を通じて身に付ける独自の指導を行っている。

【ポラリスアカデミアHP(https://polaris-academia.co.jp/)

著者紹介

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