改めて考える…「米国の逆イールド」が示唆すること【ストラテジストが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●米国では10年国債利回りが2年国債利回りを下回る逆イールドが発生、米景気を懸念する声も。

●直近のコロナでの景気後退期を除き、過去、逆イールド発生から約2年2ヵ月で景気後退の傾向。

●米国株は直近を除き逆イールドから景気後退まで上昇傾向、当面はタカ派FRBの動向に要注意。

米国では10年国債利回りが2年国債利回りを下回る逆イールドが発生、米景気を懸念する声も

3月29日の米国債券市場において、10年国債利回りが2年国債利回りを下回る「逆イールド(長短金利の逆転)」が発生しました。この背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制に向けて積極的な利上げを示唆していることがあり、その結果、将来の金融政策の変化に敏感な2年国債利回りに強い上昇圧力が生じ、一時的に10年債利回りの水準を超えるに至りました。

 

逆イールドは、一般に景気後退の予兆と解釈されることが多く、過度な利上げに対する警鐘ともいえます。実際、直近のフェデラルファンド(FF)金利先物市場では、FF金利の誘導目標について、来年は中立水準(2%台前半)を大幅に上回り、3.00%~3.25%に達するとの見方が織り込まれており、市場参加者の間には、積極利上げが景気を冷やす恐れがあるとの声も聞かれます。

直近のコロナでの景気後退期を除き、過去、逆イールド発生から約2年2ヵ月で景気後退の傾向

そこで今回のレポートでは、米10年国債利回りが米2年国債利回りを下回った場合の逆イールドについて、過去、米国景気や株式市場にどのような影響を与えたかを検証します。米国は1990年以降、4度の景気後退局面を経験していますが、米10年国債利回りと米2年国債利回りの動きをみると、そのいずれにおいても、景気後退局面を迎える前に、逆イールドが発生していることが分かります(図表1)。

 

(注)データは1983年1月4日から2022年4月5日。 (出所)Bloombergのデータおよび全米経済研究所(NBER)の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]米国の逆イールドと景気後退期 (注)データは1983年1月4日から2022年4月5日。
(出所)Bloombergのデータおよび全米経済研究所(NBER)の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

具体的に、逆イールド発生から景気後退までの期間を確認すると、直近の景気後退期を除く過去3回の平均では、約2年2ヵ月を要していました。直近では、2019年8月に逆イールドが発生し、その6ヵ月後に景気後退局面を迎えました。かなり短期間で景気後退入りとなりましたが、これは直近の景気後退が、新型コロナウイルスの感染拡大という特殊要因によるためです。

米国株は直近を除き逆イールドから景気後退まで上昇傾向、当面はタカ派FRBの動向に要注意

次に、逆イールド発生から景気後退入りまでの期間におけるダウ工業株30種平均の動きを検証します(図表2)。直近を除く過去3回の期間で、ダウ工業株30種平均はいずれも2ケタの上昇となりました。しかしながら、直近については、逆イールドが発生した2019年8月から2020年2月の景気後退入りまでの期間、約3.8%下落しました。やはり、コロナの影響で、過去の傾向とは異なる動きになったと考えられます。

 

(注)ダウ工業株30種平均の騰落率は月末値で計算。 (出所)Bloombergのデータおよび全米経済研究所(NBER)の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]逆イールド発生から景気後退までの米国株 (注)ダウ工業株30種平均の騰落率は月末値で計算。
(出所)Bloombergのデータおよび全米経済研究所(NBER)の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

以上より、米国では逆イールドが発生すると、一定の期間を経て景気後退入りする可能性が高いと判断されます。ただ、直近のケースを除けば、逆イールド発生から景気後退入りまでは約2年2ヵ月の期間があり、その間、株価は上昇する傾向が確認されています。今回も、この傾向があてはまるとは限りませんが、少なくとも米景気をみる上では、タカ派的な姿勢を強めているFRBの政策の舵取りには注意が必要です。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『改めて考える…「米国の逆イールド」が示唆すること【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

(2022年4月6日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

投資情報グループは、運用や調査経験豊富なプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの情報発信を行っています。幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、年間で約800本の金融市場・経済レポートの発行の他、YouTube等の動画、Twitterでの情報発信を行っています。

著者紹介

連載【市川雅浩・チーフマーケットストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、三井住友DSアセットマネジメント、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料は三井住友DSアセットマネジメントが信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧
TOPへ