不動産投資物件で行われる「大規模修繕工事」は、物件価値を高め空室を防ぐ効果も期待できる重要な工事です。しかしその意味を十分に理解せず、請求されるがまま修繕積立金を払い続けている所有者も少なくないといいます。改めて「大規模修繕」について考えてみましょう。
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実際に大規模修繕が行われる時期を確かめる

区分所有マンションの購入を検討している人にぜひ確かめてもらいたいのが大規模修繕工事の実施される時期です。購入を検討している物件が大規模修繕をすることになれば、価格が上昇したりすぐに買い手が付いたりすることが考えられます。またすでに物件を保有している場合は、大規模修繕が行われ付加価値が上がった後に売却するなど出口戦略の検討材料にすることもできるでしょう。

 

いずれの場合も大規模修繕の時期を確かめることは、投資のタイミングを図る一つの指標となるため、ぜひ確認することをおすすめします。

 

当初の計画時期から変わることもある

分譲マンションでは建築時に大規模修繕の計画が立てられていることが一般的です。しかし建物の劣化状況や積立金の残高などを考慮し管理組合などの協議によって時期が変わることがあります。実際に実施される時期についても先の「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」に記載があるため確認してみましょう。

 

同調査によると大規模修繕の1回目は16.3年、2回目は29.5年、3回目が40.7年の築年数で行われています。今後実施される時期の見通しを立てる際や売却のタイミングを測る際の参考材料になるでしょう。

 

修繕積立金が不足している物件がある

分譲マンションでは建築時に大規模修繕の計画が立てられていますが、そのための積立金が不足している物件もあります。「平成30年度マンション総合調査結果」によると、調査対象の34.8%が積立金の不足があると回答。原因は建築費の上昇や入居者の減少などが想像されますが、いずれにしても大規模修繕やその他中小規模の修繕が延期されたり十分に行われなかったりする可能性があります。

 

区分所有マンションの購入を検討する際は、物件ごとの積立金不足がないかだけでなくマンション全体の積立状況も確かめてみると良いでしょう。

大規模修繕で行われる工事

区分所有マンションでの大規模修繕は、建築当初の計画を元に管理組合で決められた工事内容で行われます。しかし1棟所有の場合は、オーナーがどういった工事をするのか決めることが可能です。いずれ1棟所有の不動産投資も視野に入れているのであれば大規模修繕にどのような工事があるか早めに知っておくことをおすすめします。

 

大規模修繕で行う主な工事

●外壁修繕

外壁の塗装、タイルの補修や張り替え、各ジョイントの防水シーリング打ち替え

 

●屋上防水

屋上床防水の再塗装、あるいは防水シートの張り替え、雨水排水口の清掃

 

●バルコニー床

各部屋のバルコニーは共用部分のため、床防水の再塗装と雨水排水口の清掃

 

●廊下、階段、鉄部

共用部の廊下や階段の床再塗装、手すりなど鉄部の再塗装

 

●エントランス

エントランスの床再塗装やタイル補修、入り口ドアの補修や入れ替え

 

●電灯設備

エントランスや廊下、階段、外部などの電灯の入れ替え

 

●アンテナ

共用アンテナの補修や入れ替え

 

●インターホン

インターホンが共用設備の場合は補修や入れ替え

 

●消火設備

消火器や消火栓、火災報知器などの点検や入れ替え

※法定で時期が定められているため、大規模修繕と時期が異なることもある

 

●エレベーター

詳細点検や部品交換、本体の入れ替え

 

●駐車場、車道、歩道、植栽

路面の整備、機械式立体駐車場では機械整備や入れ替えや植栽の入れ替え

大規模修繕は費用相場や時期、積立金不足も確かめる

大規模修繕は物件の価値を高め空室回避や売却価値を高めるうえで大切な工事です。建物の外観が汚れていたり共用部に損傷があったりすると、たとえ部屋のリノベーションによって物件価値を高めていてもその魅力を下げてしまいかねません。積立金の相場や積立方式を確かめてしっかりと支払いを行い、大規模修繕が確実に実施されるよう協力をしましょう。

 

また実際に大規模修繕が行われる時期や建物全体での積立金の不足がないかも確かめたいところです。これらはネットに掲載されている情報だけでは分からないため、気になる物件があれば電話やメールで問い合わせをしてみましょう。