不動産投資物件で行われる「大規模修繕工事」は、物件価値を高め空室を防ぐ効果も期待できる重要な工事です。しかしその意味を十分に理解せず、請求されるがまま修繕積立金を払い続けている所有者も少なくないといいます。改めて「大規模修繕」について考えてみましょう。
マンション修繕積立金「平均月1万1,243円」も「不足が3割」の驚き

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不動産投資における「大規模修繕」の意味とは

マンションで行われる大規模修繕は単に建物の痛みを直すだけでなく、不動産投資においても重要な役割を持っています。例えば、外壁塗装をすれば外見が良くなり新規の入居者を募るうえで有利に働くことでしょう。また、照明が切れて暗かった廊下が修繕されて明るくなれば、防犯に不安を感じていた入居者の退去を引きとめられるかもしれません。

 

物件売却でも有利に働く

さらに出口戦略である売却においても大規模修繕工事は有利に働くことが期待できます。購入を検討する人の多くは入居率を確認するため、建物状態が良く入居率も高ければ購入を前向きに考えてもらえるはずです。実際に見たり物件情報サイトに掲載されたりしたときに外観がきれいであれば多くの人の目に留まることになり問い合わせの件数が増えるかもしれません。

 

大規模修繕が行われれば物件の修繕履歴に記載されるため、「物件の価値をしっかりと見極めたい」という人にもしっかりアピールできます。このように大規模修繕は、物件売却においても有利に働く工事といえるでしょう。

 

大規模修繕の費用相場

2017年に国土交通省が行った「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」の資料に大規模修繕の費用相場が記載されています。これは2017年の直近3年間にマンション大規模修繕工事に関する設計コンサルタント業務を受注した134社944の事例から集計された実際のデータです。同調査によると1戸あたりの工事金額の平均は、1回目が100万円、2回目は97万9,000円、3回目以上が80万9,000円となっています。

 

毎月の修繕積立金の相場

大規模修繕の費用は毎月集金され積み立てている修繕積立金から支払われます。2018年に国土交通省が行った「平成30年度マンション総合調査結果」によると、2018年度における1戸あたりの修繕積立金は1ヵ月1万1,243円、駐車場の使用料から充当される駐車場の修繕を含む修繕積立金は、1ヵ月1万2,268円でした。

 

修繕積立金の段階増額積立方式に注意

修繕積立金で注意をしたいのが積立方式です。同調査にある2018年時点の物件完成年次別1戸あたりの修繕積立金を見ると、古い物件ほど修繕負担金が多く新しい物件では平均を下回る額になっています。なぜなら新しい物件ほど修繕積立金が段階的に増える段階増額積立方式になっているからです。同調査によると2010年以降の物件では67.8%の物件が段階増額積立方式でした。

 

そのため築年数の浅い物件を購入する際は、その時点での修繕積立金だけでなく段階増額積立方式かどうかも確かめるようにしましょう。