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コロナ禍がもたらした「コミュニケーションの弊害」
企業の産業医として、また市井の精神科医として勤めていると、多くの方々がメンタル不調に悩まされていることを日々痛感します。
精神科医として、そのような方たちと接する機会が多いことは、その性質上、なにも特筆すべきことではないかもしれません。しかし、産業医としても同様の感想を持つことは、そこにはきっと意味があることなのだろうと、思わせられるのです。
いうまでもなく、コロナ禍におけるコミュニケーションの分断や、業務や職能の絶対的評価が、多くのビジネスパーソンの心を蝕んでいます。
リアルコミュニケーションの代替手段であるチャットツールやオンラインツールは、業務内容の伝達や業務進捗の把握には、それなりの機能を果たしているといえるでしょう。しかしそこには、いわゆる遊びや余白のようなものがなく、字義どおりの解釈が情報の大半になってしまう恐れがあります。
一方で、特に業務をアサインする側や進捗管理をする側にとっては、なぜ時間を自由に使えるのに、これだけ自己決定の余地があるのに、アウトプットや成果物がこの程度なのか、という管理上の不満が溜まりがちです。
しかし実際は、高度に時間管理が求められるがゆえに、脳のスイッチングコストは常に高止まりし、期待値と実態値には大きな乖離が生じてしまうのです。
ゆとりのないコミュニケーションや業務負荷の増大によって、メンタル不調の素地は否応無しに整ってしまいました。
もちろん、環境変化に適応できる方や、従前より、リモートワークをうまく活用していた方もいるため、その影響度は青天井ではないでしょう。
ハイブリッド型の働き方も大いに検討され始めているさなか、悪影響ばかりが議論されるのは、大変に極端なことかもしれません。
しかし、ただでさえ高度化した働き方に、追い打ちをかけるように登場したリモートワークの強要は、一定規模のビジネスパーソンに深刻な打撃を与えていることも事実です。
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