多くの犠牲者を出した東日本大震災から11年。未曽有の災害をきっかけに、私たちの防災意識が高まりました。万が一に備えて大切なことは色々とありますが、そのひとつが、自身の住む街に、どのようなリスクが内包しているかを知り、対策を講じること。いまいちど「街の危険」を点検してみましょう。
東京「地震危険度」ランキング…「家を買ってはいけない」の真実

東京都5,177町丁目…地震に強い街、弱い街

ハザードマップの他にも、各自治体は防災に対してさまざまな取り組みが行われています。たとえば東京都では、条例に基づき、地震に関する地域危険度測定調査を行い、結果を公表しています。だいたい5年ごとに調査は行われ、最新調査(第8回)は2018年に行われています。

 

同調査では、都内の市街化区域の5,177町丁目について、自身に関する危険性を3つに分けて測定し、総合的な危険度を公表しています。

 

  • 「建物倒壊危険度」建物倒壊の危険性
  • 「火災危険度」火災の発生による延焼の危険性
  • 「災害時活動困難度」道路の整備状況による災害時の活動の困難さ
  • 「総合危険度」建物倒壊危険度、火災危険度に災害時活動困難度を加味して総合化

 

「建物倒壊危険度」が最も高かったのは「墨田区京島2丁目」。東武鉄道「曳舟」駅から南方向へ5分ほど歩いた木造住宅が密集するエリアで、その南を東武鉄道亀戸線が走っています。地盤は「沖積低地4」に分類され、地震による揺れが大きく増幅されます。

 

*軟弱な沖積層の厚さが25m以上40m未満で沖積低地の中で、2番目に軟弱層が厚い地域

 

「火災危険度」が最も高かったのが、「足立区千住柳町」。ターミナル駅である「北千住」駅から西へ15分ほどいった住宅街。前出の「京島2丁目」同様、「沖積低地4」に分類される地盤の緩い街で、戸建てのほか低層のアパートなどが密集エリア。道幅も狭く、ひとたび火災が起きれば、延焼しやすい条件が揃っているといえそうです。

 

「災害時活動困難度」が最も高いのは「八王子市裏高尾町」。高尾山の北、八王子JCTのある地域で、道路の整備状況などから、災害時孤立化の恐れがありそうです。

 

そして「総合危険度」として最も地震時に危険とされたのが「荒川区町屋4丁目」。東京メトロ千代田線「町屋」駅から北西へ徒歩5分ほど。前出の「京島2丁目」や「千住柳町」と同様、「沖積低地4」に分類される街で、車が1台通るのもやっとという細く入り組んだ路地に木造の戸建て住宅が密集。幹線道路からも遠く、消防車なども入って来づらい街です。

「災害に強い」は絶対ではない

東京都の災害危険度をみてきましたが、これらはあくまでも相対的な評価であり、「住むなら危険度の低い街がいい」とか「危険度が高いところに家を買ってはいけない」というものではありません。

 

たとえば危険度の高ければ、地震の際に家が壊れるとイメージしますが、そうとも限らないでしょう。危険度の高い地域は地盤が柔らかい傾向にありますが、その分、建物を建てる時には杭を深くまで打ち対策を講じていたりします。逆に地盤の高いところではそこまで深くまで打つことはなく、地盤の弱い街だから建物は壊れやすい、地盤が強い街だから建物は壊れない、とは一概にはいえないわけです。

 

ただ万が一のことがあった際には火災が延焼しやすかったり、消防車や救急車の到着が遅くなったりといったリスクが高いという事実は確か。街の特徴を理解して、日常的に万が一に備えておくことが何よりも重要です。