「個人型確定拠出年金」、通称「iDeCo(イデコ)」は、税金の優遇を受けながら老後の資産形成ができる優れた制度です。
ただし、本来引かれるはずの税金が引かれないだけなので、効果を実感している人は少ないのではないでしょうか。
本記事では、iDeCoで税金が優遇される3つのタイミングを中心に、運用するうえでのデメリット(注意点)についても解説します。
1. iDeCoで税金の優遇が受けられる3つのタイミング
iDeCoは、「拠出時」「運用時」「受給時」の3つの局面で税金の優遇が受けられます。
1.1. 拠出時
最も節税効果が大きいタイミングが、拠出時。
iDeCoは掛金、つまり毎月積み立てる金額が全額所得控除対象になるため、所得税や住民税などがかかる課税所得から差し引くことができます。これによって、同年の所得税と翌年の住民税が軽減されるメリットがあります。
その節税効果は、拠出した金額に対して15~33%ほど。特に、厚生年金の概念がない自営業やフリーランスの方は、掛金の上限額が多めに設定されているので、iDeCoの運用を検討してもよいでしょう。
ただし、「所得税や住民税の納付額がゼロ」の方は、全額所得控除の対象外になるので注意が必要です。具体的には、専業主婦(主夫)や住宅ローン控除を利用している方などが当てはまります。
2017年から専業主婦(主夫)もiDeCoを運用できるようになりましたが、無収入の方や、年収を103万円以内に抑えているパートの方も所得税や住民税を払う義務がないので、iDeCoの全額所得控除は残念ながら受けられません。
しかし、全額所得控除の対象外の方も、次に説明する運用時と受取時の税金優遇は受けられます。
1.2. 運用時
運用時のメリットは、利益が非課税になることです。
通常なら、株式などの金融商品で利益を出すと、売却時に20.315%が税金として引かれます。ところが、iDeCoの運用で得た利益には税金が一切かからず、そのまますべてが手元に残ります。
約2割が引かれるか残るか。この差は大きいですよね。
1.3. 受取時
受取時のメリットは、税金の控除制度があることです。
iDeCoの掛金は60~75歳の期間中にまとめて受け取る「一時金」か、毎月分割で受け取る「年金」のいずれかで受け取ります。
このとき、一時金なら「退職所得控除」、年金なら「公的年金等控除」として、税金が控除されます。
「全額所得控除」が受けられない方も、「運用利益非課税」と「受取時の税金控除」は受けられるので、iDeCoを運用して節税対策するメリットは十分あります。
2. 知っておきたいiDeCoの節税以外のメリット
ここでは、iDeCoの節税以外について見ていきましょう。
2.1. 転職時に運用資産を移管できる
iDeCoは、転職しても運用資産を移管することができます。
iDeCoは“個人型”確定拠出年金ですよね。確定拠出年金には2種類があり、もうひとつ“企業型”の「企業型DC」という形式があります。企業型DCの場合、掛金は企業が拠出する形で従業員の資産形成をバックアップします。
個人型と企業型はどちらも確定拠出年金であることに違いはないので、両者間にポータビリティ制度があるというわけです。
例をあげれば、もともとフリーランスで活動していてiDeCoに加入していた方が企業型DCのある企業に就職すれば、以前からiDeCoで運用していた資産を新たな企業型DCに移管できます。
そして、その企業を退社したあとにまた企業型DCがある企業に転職すれば、転職先の企業型DCに移管できます。
そのため、確定拠出年金への拠出を滞りなく続けることができ、継続的な老後の資産形成ができるのです。
2.2. 運用の手間がかからない
また、iDeCoは毎月一定の金額を自動的に積み立てる形式なので、初期設定さえしてしまえば、あとはほぼノータッチで運用できます。
iDeCoの資産運用は、ドルコスト平均法を利用した長期投資の基本を押さえており、株式売買のイメージにありがちな企業分析や売買タイミングの見極めなどは不要です。
年に数回程度、iDeCoの口座残高を確認するだけで問題ありません。
3. iDeCoのデメリット
今度は、iDeCoの節税以外のデメリット(注意点)を見てみましょう。
3.1. 元本割れリスクがある
iDeCoには元本割れのリスクがあることを忘れてはなりません。iDeCoは年金という体裁を取っていますが、投資信託で運用しています。つまり、価格変動は避けられないのです。
この結果、積み立てた資産が減少する危険性は否定できません。もちろん、公的年金の受け取りには影響しないので、その点はご安心ください。
3.2. 原則60歳になるまで引き出せない
iDeCoは年金という位置づけにあるため、原則的に60歳になるまで引き出しができません。すぐに使えるお金ではないので、無理のない掛金を設定しましょう。
長い人生のなかでは、収入がダウンすることもありえます。掛金の金額は1年に1回まで変更可能なので、払い続けることが難しいときは掛金を減額するのも賢い選択です。
なお、iDeCo 加入者が60歳になる前に亡くなったときに限り、引き出しが可能になります。この場合、iDeCoの運用資産を売却した「死亡一時金」が遺族に支払われます。
ただし、死亡一時金は加入者の死亡から5年以内に遺族が申請しないと支払われません。このため、家族にiDeCoの加入情報を伝えておくと安心です。
3.3. ふるさと納税の控除額が減る
iDeCoを運用していると課税所得が下がることから、ふるさと納税の控除額が減ったり、口座管理費用や手数料などの雑費が意外とかかったりなどのデメリットもあります。
まとめ
iDeCoには節税効果がありますが、メリットばかりに目を向けてはいけません。デメリットもしっかり把握したうえで始めることをおすすめします。