2020年にiDeCo(イデコ)の法改正が発表され、2022年5月より加入可能年齢が65歳までに拡大されます。もう一つの変更点と一緒に、法改正のポイントと注意点を解説します。
iDeCoの加入可能年齢が65歳まで拡大へ…2022年法改正の概要と注意点 (※写真はイメージです/PIXTA)

iDeCo(正式名称:「個人型確定拠出年金」)は、「全額所得控除」や「運用利益非課税」などの節税効果を見込める私的年金制度です。

 

このiDeCoの加入可能年齢は60歳まででしたが、法改正によって2022年5月から65歳までに拡大されます。また、受け取り可能年齢は60歳~70歳まででしたが、2022年4月以降は60歳~75歳までに拡大されます。

 

これらの新たな年齢設定は、老後の資産形成に役立てることができるのでしょうか?

 

対象年齢の拡大に注目して、活用方法と注意点を解説します。

 

1.【2022年】iDeCo法改正のポイント2つ

早速、2022年からiDeCoはどう変わるのか、法改正のポイントを2つ見ていきます。

 

1.1. 加入可能年齢が「65歳まで」に拡大へ

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

これまでiDeCoは、20歳から60歳までの間に毎月一定額を積み立てて投資信託を運用し、60歳以降に成果を受け取れるという年齢設定になっていました。

 

しかし、2020年に発表されたiDeCoの改正により、2022年5月以降は加入可能年齢が65歳まで拡大されます。

 

それでは、これまでiDeCo に加入していなかった方が60歳でiDeCoを始めたら、資産形成にプラスになるのでしょうか?

 

60歳から始めたとすれば、運用期間は最大でも5年間です。あまり利益にならないイメージをお持ちになる方も多いかもしれませんね。

 

実際のところ、毎月掛金1万円を利回り3%で5年間運用した場合のシミュレーションは、積立元本600,000円+利益47,358円で、合計647,358円(SBI証券『積立シミュレーション』による)になります。

 

5年間で得られる利益は、5万円以下です。しかし、通常の株式取引では利益に20.315%が課税される一方、iDeCoは利益が非課税なので、利益はすべて手元に残ります。

 

さらに、iDeCoは掛金が全額所得控除になる節税効果が期待できます。

 

たとえば、年収400万円の方が毎月掛金1万円を利回り3%で5年間運用した場合のシミュレーションは、年間で36,500円(内訳は所得税24,500円+住民税12,000円)で、合計182,500円の節税が見込めます(ろうきん『iDeCo節税シミュレーター』による)。

 

このように、60歳でiDeCoに加入しても大きな税制優遇の恩恵を受けられます。そのため、「もう遅いかな」と迷っている方でも、あと少し資産を増やしたいと思うなら、60歳からiDeCoを始めるのも選択肢のひとつです。

 

 

 

1.2. 受け取り開始年齢の上限が「75歳まで」に拡大へ

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

60歳から70歳までだったiDeCo の受け取り可能年齢が、2022年4月以降は75歳までに拡大されることも、資産形成にどのような影響を与えるのか気になりますよね。

 

この改正は、公的年金の繰下げ受給年齢が75歳まで拡大したことに伴って実施されましたが、iDeCoの場合は年齢を繰り下げることで受け取る金額が増えることはありません。

 

それでも、iDeCoの受け取り開始を75歳まで繰り下げることにはメリットがあります。

 

まず、株価上昇で運用資産の利益が増えている場合は、受け取り開始年齢を繰り下げることで運用利益を最大限に増やせます。

 

一方、株価暴落で運用資産が減ってしまった場合は、株価回復まで受け取り時期をずらすことができます。受け取りまでの期間を任意に延ばせることで、臨機応変な相場への対応がしやすくなるのです。

 

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2. 60歳でiDeCoに加入する前に知っておきたい注意点2つ

今回の法改正を受けて、60歳でiDeCoへの加入を検討するときの注意点を2つお伝えします。

 

2.1. すべての人が60歳以降も加入できるわけではない

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

65歳までiDeCoに加入できる対象となる方は、60歳以降も雇用を持続する国民年金の納付者、つまり第2号被保険者のサラリーマンや公務員です。

 

なお、60歳から65歳までの間に国民年金の「任意加入」をしていれば、第2号被保険者に扶養されている配偶者である第3号被保険者も65歳までiDeCoに加入できます。

 

国民年金の任意加入とは、国民年金に未納期間を持つ方が、年金を満額受給できる480ヵ月の加入期間になるべく近づけて受給額を増やせるように、60歳を過ぎてから未納分を納付する制度です。

 

国民年金の任意加入が条件となっているのは、第1号被保険者である自営業やフリーランスの方も同様です。

 

そのため、20歳から60歳までの480か月間に国民年金の納付を済ませている自営業やフリーランスの方がiDeCoに加入できる年齢は、60歳までとなります。

 

第1号被保険者の場合、この法改正は老後に向けた資産形成を後押しする救済策ともいえるわけです。

 

 

2.2. iDeCoの受取可能年齢が遅くなる場合がある

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

iDeCoの加入可能年齢が65歳まで拡大することで、加入を検討する50代の方が増える可能性がありますが、この場合は受け取り開始時期に注意が必要です。

 

iDeCoを60歳から受け取るにはiDeCoの加入期間が10年以上なければいけないので、60歳の時点で10年未満なら、受け取り可能年齢が加入期間に応じた年数だけ繰り下がります。

 

たとえば、52歳でiDeCoに加入した方は、61歳にならないと受け取りができないのです。

 

法改正前は、この60歳から61歳までの間は掛金を積み立てられませんでしたが、法改正後はこの期間もiDeCoに加入して積み立てできるので、空白期間が発生せず、全額所得控除も引き続き受けられます。

 

これは心強いですよね。

 

なお、法改正後に60歳以上でiDeCoに初加入する方は加入日から5年以降で受け取り可能となります。

 

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