高齢者も安心して働ける環境を目指して、定年年齢が引き上げられ、「70歳定年制」が現実になろうとしています。働き続けること、そこにあるのはメリットだけでしょうか。みていきましょう。
手取り23万円…団塊ジュニアに突きつけられる「20年後の悲劇」 (※写真はイメージです/PIXTA)

定年後に収入ダウン…「働くモチベーション」を保つことはできるのか?

定年年齢の引き上げは、「働くこと以外、特に何もすることがない」というような人にとっては願ったりも叶ったりでしょう。また定年後を見据えた資産形成の期間が長くなるので、より無理なく貯蓄を進められる、というメリットも考えらえます。

 

一方で、現実問題、働き続けるモチベーションは維持できるのか、疑問を感じる人も多いでしょう。大卒男性会社員の場合、50代後半の平均は53万円。それが60代前半で38万円、60代後半で36万円となり、ピーク時の約3割減となっています。

 

【男性大卒会社員「平均月収」の年代別推移】

20~24歳:248,700円

25~29歳:297,200円

30~34歳:348,100円

35~39歳:399,600円

40~44歳:443,600円

45~49歳:484,300円

50~54歳:546,400円

55~59歳:531,300円

60~64歳:389,600円

65~69歳:363,400円

70歳:377,500円

 

出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より算出

 

年収減の理由と考えられるのが、多くが60歳で定年を迎え再雇用されていること。それまで部長などと呼ばれていた人が、肩書を失い、給与も大きく減少したうえで働き続けるわけです。もちろん業務内容なども変わるでしょうから、当然と言えば当然ですが、「ちょっと前までは会社の中枢で頑張っていたのに……」とモチベーションを保てない人も多くいるでしょう。

 

さらに低収入で苦しむ団塊ジュニアなどはさらに悲惨です。1971年から1975年に生まれた世代で、第2次ベビーブームで誕生した彼らのなかでも1973年出生で今年50歳を迎える人たちは200万人を超えています。

 

彼らが大学新卒で社会に出たのは1996年のこと。バブル崩壊後の就職難で正社員を諦めて社会に出た人も多かった「就職氷河期(1993年から2005年卒業で就職活動に差し掛かった年代)」にも当たる世代です。

 

50代を迎えようとしている時点の男性大卒非正社員の平均年収は30万円、手取りで23万円ほど。その後もほとんど増えることなく、60代を迎えることになります。

 

【男性大卒非正社員「平均月収」の年代別推移】

20~24歳:213,700円

25~29歳:278,300円

30~34歳:277,700円

35~39歳:284,300円

40~44歳:307,100円

45~49歳:304,300円

50~54歳:317,500円

55~59歳:325,800円

60~64歳:321,600円

65~69歳:281,300円

70歳:290,800円

 

出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より算出

 

社会人になってから一度も報われることなく、2033年に60歳を迎える団塊ジュニア。そのころには、定年は70歳が当たり前の社会になっているでしょうか。それから10年後の2043年、70歳を迎えたころには、定年は75歳、80歳と引き上げられているかもしれません。

 

――いつか報われる

 

そう信じてきた人たちも、さすがに限界を超えているでしょう。定年をただ引き上げるだけでなく、正社員も非正社員も、無理なく働き続けることのできる体制作りが急務です。