定年後に収入ダウン…「働くモチベーション」を保つことはできるのか?
定年年齢の引き上げは、「働くこと以外、特に何もすることがない」というような人にとっては願ったりも叶ったりでしょう。また定年後を見据えた資産形成の期間が長くなるので、より無理なく貯蓄を進められる、というメリットも考えらえます。
一方で、現実問題、働き続けるモチベーションは維持できるのか、疑問を感じる人も多いでしょう。大卒男性会社員の場合、50代後半の平均は53万円。それが60代前半で38万円、60代後半で36万円となり、ピーク時の約3割減となっています。
【男性大卒会社員「平均月収」の年代別推移】
20~24歳:248,700円
25~29歳:297,200円
30~34歳:348,100円
35~39歳:399,600円
40~44歳:443,600円
45~49歳:484,300円
50~54歳:546,400円
55~59歳:531,300円
60~64歳:389,600円
65~69歳:363,400円
70歳:377,500円
出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より算出
年収減の理由と考えられるのが、多くが60歳で定年を迎え再雇用されていること。それまで部長などと呼ばれていた人が、肩書を失い、給与も大きく減少したうえで働き続けるわけです。もちろん業務内容なども変わるでしょうから、当然と言えば当然ですが、「ちょっと前までは会社の中枢で頑張っていたのに……」とモチベーションを保てない人も多くいるでしょう。
さらに低収入で苦しむ団塊ジュニアなどはさらに悲惨です。1971年から1975年に生まれた世代で、第2次ベビーブームで誕生した彼らのなかでも1973年出生で今年50歳を迎える人たちは200万人を超えています。
彼らが大学新卒で社会に出たのは1996年のこと。バブル崩壊後の就職難で正社員を諦めて社会に出た人も多かった「就職氷河期(1993年から2005年卒業で就職活動に差し掛かった年代)」にも当たる世代です。
50代を迎えようとしている時点の男性大卒非正社員の平均年収は30万円、手取りで23万円ほど。その後もほとんど増えることなく、60代を迎えることになります。
【男性大卒非正社員「平均月収」の年代別推移】
20~24歳:213,700円
25~29歳:278,300円
30~34歳:277,700円
35~39歳:284,300円
40~44歳:307,100円
45~49歳:304,300円
50~54歳:317,500円
55~59歳:325,800円
60~64歳:321,600円
65~69歳:281,300円
70歳:290,800円
出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より算出
社会人になってから一度も報われることなく、2033年に60歳を迎える団塊ジュニア。そのころには、定年は70歳が当たり前の社会になっているでしょうか。それから10年後の2043年、70歳を迎えたころには、定年は75歳、80歳と引き上げられているかもしれません。
――いつか報われる
そう信じてきた人たちも、さすがに限界を超えているでしょう。定年をただ引き上げるだけでなく、正社員も非正社員も、無理なく働き続けることのできる体制作りが急務です。