高齢者も安心して働ける環境を目指して、定年年齢が引き上げられ、「70歳定年制」が現実になろうとしています。働き続けること、そこにあるのはメリットだけでしょうか。みていきましょう。
手取り23万円…団塊ジュニアに突きつけられる「20年後の悲劇」 (※写真はイメージです/PIXTA)

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「70歳まで働き続ける」が当たり前の時代がくる

2013年、「高年齢者雇用安定法」の改定によって、定年は60歳から65歳へ引き上げられ、経過措置期間を経て、2025年4月から定年制を採用しているすべての企業は65歳定年制が義務になります。

 

さらに2021年4月1日に施行された改正「高年齢者雇用安定法」では、「70歳までの定年引上げ」「70歳までの継続雇用制度」などを努力義務とすることが決まりました。

 

定年年齢の引き上げに対して、企業の対応としては大きく3つ。まず「継続雇用制度」の導入です。これは従業員が希望した場合に、定年後も引き続き雇用を確保する方法で、大きく、定年を迎えた従業員を改めて再雇用する「再雇用制度」と、役職などはそのままに勤務期間を延長する「勤務延長制度」のふたつに分かれます。前者は嘱託社員などとして再雇用し、後者は業務が高度かつ専門的で、後任を確保しにくいケースに適しているといわれています。

 

2つ目は「定年年齢の引き上げ」です。定年年齢が明確になっているので、従業員は安心して働ける一方、世代交代のタイミングが難しく、若年層のモチベーション維持が課題となります。そのため役職定年制、給与体系の見直しなどの対策が必要とされています。

 

3つ目は、定年制そのものの廃止です。アメリカではThe Age Discrimination in Employment Actという法律により、年齢を理由とした雇用の差別を禁止しています(公共交通機関の業務や警察官、消防士などは定年制が許容されています)。米国のほか、英国やカナダなども定年制は禁じられています。勤労継続のモチベーションがあがるなどのメリットが期待できる一方、加齢で就業が難しくなった際、解雇の正当事由になるかどうか判断が難しいとされています。

 

何はともあれ、人生100年時代といわれるなか、現在思い描いている定年年齢より、はるか長く働くことができる社会が訪れようとしています。