多彩な症状、潜在している気分の落ち込み
自律神経のシステム異常が起こると、頭痛、吐き気、動悸、倦怠感、そして、便秘(逆に下痢といった腸の不調)、時に微熱など、どれとは定まらない多彩な身体の不調を生じるが、その背景には、心的エネルギーの枯渇による、気分の落ち込み、気力の低下が潜んでいる。
それでも会社に行かねばと無理をすると、より身体症状が強まってくる。不調は在宅の時に少しずつすすんでいたが、出社の負担で一気に顕在化したと思われる。出社すれば、顧客対応やクレーム対策、難しい上司からの圧力などいろいろ面倒でエネルギーのいる作業をしなくてはならない。必ず答えのある学校教育で成功を収めてきたA君にとって、おおむね手順の決まったPCでの仕事はさほどのエネルギーを必要としなかった。
しかし、対面の作業は、想定外の事案がほとんどで、答えを自分で作らねばならない。以前はむしろそれを得意としていたのに、その時、すさまじい負担を感じるようになっていたのは、心的エネルギーが枯渇しかかっていたことによるのである。
心的エネルギーの低下は睡眠の質の低下を招く
A君はかなり前から寝つきが悪くなっていた。何とか寝てはいたが、次の日のリモート業務が始まる8時半近くにようやく起きだし、そして夜の10時ごろまでパソコンに向かっていた。通勤していたころより、おなじ成果を得るために、より多くの手間が必要になっていたので、かえって業務時間が増えたのである。
しかし、仕事を終えた直後では、脳の興奮はとれず、そのあと3時間もたった午前1時頃ようやく眠りに入れる。しかし、ちょくちょく目が覚め、睡眠不足だけでなく質の低下が起こっていたのである。何よりも、A君、ほとんど家から出ず、運動らしきことを全くしていなかった。運動不足も睡眠の質の低下を招いていたのである。良質な睡眠こそが心的エネルギーの増加に最も寄与する。すなわちA君の心的エネルギーの低下は、睡眠の質の低下と関連がありそうである。
脳にたまった不要な情報の削除は、外部情報が遮断されている睡眠中でないとうまくゆかない。睡眠がうまく取れないと、削除がうまくゆかず、どうでもよい情報に惑わされやすくなる。脳のエネルギー効率も悪くなるから、脳が疲弊して、妙に神経質になり、身体のちょっとした不調にも不安を感じるようになる。重要なのは質の良い睡眠をとることなのだが、コロナは、逆に不安を掻き立て、巣ごもりにより、運動を制限させ、人から、質の良い睡眠を奪うのである。
動物を狭いところに押し込め、自由に動けない、という環境にしばらく置いておくと、眠らなくなり、些細なことに過敏におびえやすくなり死んでしまう。死後解剖すると、脳の一部が腫れ、一部が縮んでいることを見出すことができる。その調和の崩れが些細なことにより過敏にさせていると考えられているが、人間という動物も例外ではない。しかし、それを自覚することは案外難しく、身体の不調ばかりに気を取られ、かえって引きこもり、運動不足から、睡眠の質の低下を招くことになってゆく。
朝と夕方、太陽のもとでの運動をすることが夜の質の良い睡眠に効果がある。ただ、漫然と寝るのは、かえって、睡眠の質の低下を招く。1日のリズムを意識して、きちんと寝て起きることが、脳の機能を上げ心的エネルギーを増価させ、ストレス対応力が高まる。朝 太陽に当り運動すると脳は覚醒し、やる気につながる。夕方(夜ではない)の運動は寝つきをよくし、目覚めをよくする。インドアで1日パソコンに向かっている人たちには特に実行をお勧めする。
遠山 高史
精神臨床医
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