日本で格差が広がり続けている一因に、税制の不平等性が挙げられる。働いて得た所得よりも、株式や土地の譲渡など資本所得への優遇度が高いのだ。ここでは日本における「所得再分配政策」の実態と改善策について、前日銀副総裁・岩田規久男氏が解説していく。 ※本連載は、書籍『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)より一部を抜粋・再編集したものです。
「高所得者にも10万円給付」という不平等再分配…「マイナンバーと銀行口座」を紐づけると【前日銀副総裁が解説】 ※写真はイメージです/PIXTA

「シンガポールやニュージーランド」移住者が増えているワケ

さらに、最近、金融資産所得税や相続税を逃れるために、キャピタルゲイン(資産を売却した際に購入額との差額によって得られた利益)非課税国であるシンガポールやニュージーランドへ移住して永住権が認められる人の数が増えている。

 

そのため、国外転出時課税制度が2015年7月から始まった。これは1億円以上の金融資産を持っている人が海外に住所を移す場合(外国の親族への財産贈与・相続を含む)、その段階で資産が売却されたとみなして含み益に所得税を課す制度である。

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また、価額の合計額が5000万円を超える国外財産を有する居住者は、その国外財産の種類、数量および価額等を記載した国外財産調書を所轄税務署長に提出する制度も整備された。

 

これらの制度は、税負担の公平の観点から望ましい改革であるが、今後は、これらの制度を金額の多寡(たか)にかかわらず適用するような、さらなる改革が必要である。

 

 

岩田規久男

前日銀副総裁