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給与所得よりも…「資本所得」に優遇度の高い日本
日本の所得分配の改善は主として、現役世代から高齢者への年金給付や医療費援助によるもので、税による再分配効果と社会保障による現役世代内所得再分配効果が、ヨーロッパ諸国に比べて小さい。
とくに、日本の所得税は高所得者を優遇することによってその累進制(所得が高くなるにつれて、所得に対する税負担率が上昇する制度)が侵食されていることが、税による所得再分配効果を弱めている。
国税庁が発表している「所得階級別・所得種類別所得税負担率」を見ると、「他の区分に該当しない所得」の税負担率が極めて低い。「他の区分に該当しない所得」とは、利子所得、配当所得、株式や土地の譲渡所得などである。
こうした資本所得(あるいは資産所得)に対しては、日本の税制は主要先進国の中でも優遇度の高い国である。
例えば、利子所得は日本では一律20%(所得税15%、地方税5%。ただし2037年まで復興特別所得2.1%が上乗せされる)であるが、アメリカは10~37%(2018年時点、以下同じ)の総合課税で、これに州税と地方政府税(ニューヨークの場合、州税4~8.82%と市税2.7~3.4%、および税額の14%の付加税)が上乗せされる。
イギリスは、利子所得の大きさに応じて、0~45%の段階的分離課税、ドイツは26.375%の分離課税(総合課税を選択可)、フランスとスウェーデンは30%の分離課税(フランスは総合課税を選択可)である。
著者の所得分配の公平性に関する価値判断からは、利子、配当、株式と土地の譲渡益(現行の日本の土地譲渡益にかかる税は、所有期間が5年以下は所得税30%、住民税9%。所有期間5年超は所得税15%、住民税5%で、利子所得と同じ)などの資本所得を他の所得と合算した上で、その合算した総合所得が高くなると、その所得のうちの資本所得に対する税率を、その総合所得の高さに応じて0%から45%(2019年時点の給与所得の最高税率と同じ。イギリスと同じ段階税率になる)まで段階的に引き上げていく、段階的分離課税方式が望ましいと考える。
ただし、日本の給与所得税制では、大幅な給与所得控除を差し引いた金額から、さらに社会保険料の全額、扶養控除、配偶者控除、基礎控除、医療費控除など多くの所得控除が認められているため、かなり給与所得が高くならない限り、20%一律課税の資本所得の税額のほうが高くなる、といった現象が生ずる。