実際に「在職老齢年金制度の改定」で得する人はどれほどいる?
総務省『令和2年国勢調査』によると、「60〜64歳」は729万人で、総人口の6.7%。「65〜69歳」は807万人で、総人口の7.5%。「70〜74歳」は901万人で、総人口の7.1%。「60〜74歳」で、日本の総人口の20%を超えます。人口減少が続く日本において、高齢者は有力な労働力だといえます。
厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』によると、労働人口に対して「60~64」歳は6.1%を占めるものの、「65~69歳」は2.4%、「70歳以上」は1.1%と、まだまだ働ける高齢者はいるはず。「高齢者が働き続けられるように」という思いには、公的年金の財源不足はもとより、労働力不足解消という思惑も隠されているわけです。
厚生年金の65歳以上の平均年金額は17万円ほど。厚生年金分が11万円ほどだとすると、月収36万円以内であれば、年金は減額にならない計算となります。前出調査によると、月収(基本給ベース)36万円以下なのは「60〜64歳」で83%、「65〜69歳」で87%、「70歳以上」で89%。現行で「60〜64歳」で、一部支給の対象になるのは50%強といわれていますので、この年代にとってはメリットのあることのように思えます。
ただ現在の年金制度では、受給開始は65歳からが基本。希望によって60~64歳から年金を受け取る「繰り上げ受給」も選択できますが、受給率は0.5%。つまり20人に1人程度。いまや定年が65歳となり、いずれ70歳が当たり前になるだろう、といわれているなか、「在職老齢年金制度」の改定で影響を受ける人は少なく、インパクトのない変更といえそうです。