高齢者を支えることなどできない…20代、30代の悲鳴
社会保障に対する国庫支出は、ほかの先進国では増加しているのに対し、日本は減少。今後、高齢化が進行するなかで、その負担を国だけではまかないきれない、という事情のあらわれでしょう。現役世代の負担増はこれ以上は難しく、高齢者本人負担へ、という流れが鮮明になっています。
厚生労働省『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金の平均年金受給額は月額5万6,358 円、厚生年金は月額14万6,145 円でした。給付される年金だけで暮らしていけるかといえば、それぞれ事情は異なるので一概にはいえませんが、心許ない、というのは共通認識でしょう。足りない場合は、貯蓄を取り崩すことになります。
このような状況に対して、「いまの高齢者は大変」と同情を口にする人は少なく、すでに高齢化の負担増を払わされている現役世代の人たちからは、どちらかというと「こうなることは分かっていたのに、何も対策をしてこなかったのが悪い」などと、怒りに近い声が聞こえてきます。
厚生労働省『賃金構造基本統計調査』によると、20代前半会社員の手取り額は平均18万円、20代後半で21万円、30代前半で23万円、30代後半25万円ほどです(いずれも独身の場合を想定。手当含む)。
また金融広報中央委員会の『令和2年家計の金融行動に関する世論調査』によると20代の預貯金額は平均113万円、中央値は8万円。30代では平均327万円、中央値は8万円。実際に生活に余裕があるのかどうかは、ライフスタイルによって異なりますので、一概にいうことはできませんが、とても裕福と呼べるほどではありません。
さらに国税庁『民間給与実態統計調査』によると、現在の会社員の平均給与は、90年代前半と同水準。日本の経済が世界のなかでもジリ貧状態にあることを鑑みると、今後も給与が増える、という社会は描くことはできないでしょう。
どんなに考えても、高齢化問題の解決の糸口が見えてこない日本の現状。「私たちにツケを払わせるな!」と、現役世代の怒りの声が聞こえてきます。