きつい上に稼げなくなってしまったトラック運送業界は、慢性的な人手不足に陥っている。ドライバー不足解消の具体策として、経済同友会は「大型自動車免許を有する女性と外国人ドライバーの活用」を提言したが、果たして…。実現に向けた取り組みを、物流ジャーナリスト・刈屋大輔氏が解説していく。 ※本連載は、書籍『ルポ トラックドライバー』(朝日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
“危機的な人手不足”のトラック運送業界…「外国人ドライバーの雇用」が進まない根本原因 (※写真はイメージです/PIXTA)

在留資格は?…「女性と外国人」受け入れの具体策

「クローバー」では、荷台部分にあるラッシングベルトを通常よりも低い位置に配置。着替えや休憩時のストレスを軽減するため、運転席全面を覆うことができるカーテンも装備した。さらに小物類を置く収納スペースを増設するなど女性ドライバーのニーズを反映させた構造になっている。

 

トラックはこれまで男性ドライバーの目線で開発・改良が進められてきた。しかし今後、同社のような取り組みが業界全体に波及していけば、中小型はもちろん、よりハードルが高いとされる大型トラックのハンドルを握る女性も増えていく可能性はありそうだ。

 

■外国人ドライバーの受け入れを視野に

 

一方、外国人ドライバーの活用も長らく業界内で議論されてきたテーマだ。そもそも日本で外国人ドライバーが実現しないのは、運転免許制度や業法上の問題ではない。在留資格が付与されないためだ。また、トラック運送業は日本国内の労働力不足を解消する目的で新たに策定された在留資格である「特定技能」の適用業種からも除外されている。

 

これに対して、報告書では、外国人ドライバーを「特定技能」の対象として認めてもらうための標準的な教育項目を早急に策定すべきだと提言している。

 

具体的には、①トラック車両の運転技術に関する教育、②荷扱いのスキルを身につけるための教育、③運行管理システムの教育――を挙げる。すなわち、ドライバーの仕事を教育体系として確立して「専門性の高い技能」とすることで、日本の高度な技術移転と国際貢献を目的とした「技能実習制度」の趣旨に合致させようというものだ。

 

かつてトラック運送業界は運行の安全面や低賃金化による運賃競争激化への懸念から外国人ドライバーの活用には慎重だった。しかし近年は外国人ドライバーの受け入れに前向きな姿勢を示している。

 

実際、業界団体の全日本トラック協会は2020年6月、自由民主党の「外国人労働者等特別委員会」に対し、道路貨物運送業務を「技能実習二号移行対象業種」に追加するよう要望した。