「どうしてこんな目に…」とは、働いていたら誰しも一度は感じるもの。技術コンサルタント、心理カウンセラーである永嶋良一氏が紹介するのは、化学プラントの仕事をしていた際、「全責任を押し付けられそうになった」という事態。あなたならどうしますか?
「大急ぎで、こちらに来てくれ」課長の言葉に従って大撃沈のワケ【心理カウンセラーの実話】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「親しさ」を利用…会社に潜む「悪意に満ちた行為」

■どのように解決したらよいのか

 

実は、このゲームは「ねえ、君」と呼ばれるゲームなのです。これは、親しい間や仲間内ではどんなこと(失礼な発言や態度など)でも許されるという点を利用するゲームです。

 

例えば、会社で毎日顔を合わせている女性社員に「ねえ、君、最近化粧が派手になったねえ。いい人でもできたの? いや、冗談だよ。冗談。ハハハ」などと、軽口めかして話しかけるケースなどが挙げられます。冗談と言っていますが、実はその裏には、悪意が隠されていることも多いのです。

 

さて、私の事例を見てみましょう。私は1年間かけて、そのプラントのデータを採取したわけですから、その運転課の課長、製造班長、技術班長も当然よく知っている間柄でした。これを逆手にとって、課長は「よく知っている間だから、どんな無理を言ってもいい」という「ねえ、君」というゲームを私に仕掛けてきたのです。

 

しかし、そこには、やはり罠が潜んでいました。うまくいかなかったら、すべての責任を私に押し付けよう、一方、うまくいったら、すべての功績を横取りしてやろうという罠なのです。

 

このゲームも、会社などの組織のなかでよく見られるものです。同じ職場の人とは、毎日顔を合わすわけですから、どんな人であっても、ある程度は自然に親しくなるものです。その「親しさ」を利用して、面倒なことは押し付け、自分に有利なことは横取りしようという悪意に満ちた行為が、この「ねえ、君」というゲームを使って公然と実施されるわけです。

 

この「ねえ、君」というゲームは、親しいから多少の無理も言える、というところを利用して、悪意ある「無理な要求」を押し付けてくるものです。

 

したがって、もしこのゲームを仕掛けられたならば、相手が要求してくる「無理な要求」を頑としてはねつけて、絶対に受け付けないという姿勢を貫くことが大切です。「無理な要求」をはねつけると、たいていの相手は「困っているんだから、何とか頼むよ」と義理人情の世界に引きずりこんで、要求を承諾させようとしますが、そこには相手の罠が隠されていることを絶対に忘れてはなりません。

 

よく、友人にお金を貸して、その友人から、お金がないので代わりにこの品を受け取ってくれと頼まれ、結局、二束三文の品物で借金を帳消しにされてしまったという話を耳にします。これなど「ねえ、君」を利用した典型的な悪意あるゲームと言えます。

 

とにかく、「ねえ、君」のゲームを仕掛けられたら、絶対に相手の要求をのまないことを肝に銘じてください。私の場合は、自分の検討に自信がありましたので、課長の要求をのみましたが、現実には、こういった対応はあまりおすすめできません。

 

というのは、このゲームは、すべて悪意でできていますので、あなたが相手の要求をのんで、良い結果を残しても、その結果は私のように横取りされる可能性が極めて高いからなのです。相手がもし、あなたの真の友人ならば、あなたに迷惑のかかる「ねえ、君」のゲームを仕掛けてくるわけがないということを、よく理解してください。

 

■「ねえ、君」のゲームの対処法

 

相手の要求に応じない。

 

相手がもし、あなたの真の友人ならば、あなたに迷惑のかかる「ねえ、君」のゲームを仕掛けてこないということを肝に銘じる。

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永嶋 良一

1955 年大阪市生まれ。

京都大学大学院工学研究科(化学工学専攻)修了。

神戸大学大学院工学研究科(応用化学専攻)にて工学博士の学位取得。

専門は化学プロセス設計。日本企業勤務の後、Samsung グループ子会社で技術顧問に従事。

定年後は技術コンサルタント、心理カウンセラーを実施。

著書は『비즈니스 일본어 문서작성 가이드』(ビジネス日本語文書作成ガイド)(共著、ソウル、Darakwon 社)他。