不動産投資を始める場合には、自己資金が豊富な富裕層を除いて、金融機関からの融資を受けます。ただし、金融機関が物件購入に必要な費用を全額融資することは稀で、多くの場合、頭金が必要となります。それでは、投資用の物件購入にはどの程度の頭金を準備しておくべきなのでしょうか……資産コンサルタントの山崎博久氏が解説します。
「不動産投資の頭金は3割程度が理想」は本当か?【資産コンサルタントが解説】

不動産投資で頭金を入れるメリット・デメリット

ここでは、不動産投資で頭金を入れるメリットとデメリットについて考えてみましょう。メリットばかりだと思われている方は多いと思いますが、実はそうともいえない部分があります。

 

頭金を入れるメリット

不動産投資で頭金を入れるメリットは、大きく2点に集約されます。

 

頭金を入れることでローンの借入額がその分少なくなるため、返済の負担が軽減されます。また、頭金が多いほど金融機関の審査に通りやすくなるので、確実にローンを利用したい方にとっての頭金は戦略的アイテムです。

 

頭金を入れるデメリット

次に頭金を差し入れることによって考えられるデメリットについても解説します。

 

考えられる最大のデメリットは、レバレッジ効果への影響です。不動産投資は頭金だけを用意すれば残りの資金をローンで調達することができます。

 

しかし、オーナーに入ってくる家賃収入は満額なので、ローンを利用したほうが投資効率が高くなります。これをレバレッジ効果といいますが、頭金を多く用意しすぎると他人資本を活用できる比率が下がるので、不動産投資そのもののメリットが薄れてしまうことになります。

 

もう1つ、頭金を用意するまでに時間がかかることもデメリットでしょう。不動産投資は早く始めるほどメリットを享受できる期間が長くなりますが、頭金を用意するまでは始められないとなると、機会損失につながる恐れもあります。

「投資用不動産」のローン審査が大きく変化

不動産業界では2018年に起こったシェアハウス業者の破綻問題や地方銀行の不正融資問題など、不祥事が相次ぎました。金融庁も金融機関の不動産関連融資に対するチェックを厳しくした結果、ローンへの姿勢は厳しいものになってきています。

 

ただ、この問題はアパート向けローンで起きたことでもあり、マンション向け融資への影響は軽微であるとの声もありました。

 

しかし2020年に端を発した世界規模のコロナ禍は、少なからず銀行融資に影響を与えています。資金繰りや経営環境が悪化した企業などからの融資相談や返済計画の見直しなどが殺到した結果、不動産投資ローンにまで手が回らなくなっているというのが本音かもしれません。

 

さらに中国の不動産大手、恒大集団のデフォルト問題は不動産業界の問題であるため、これが日本にも波及するようなことがあると金融機関に融資への警戒感が広がる可能性もあります。

 

こうした状況を踏まえると、頭金を多く用意できるようにすることが融資の審査もスムーズにするために必須となっていくことが考えられます。

 

物件価格以外に仲介手数料や司法書士手数料、各種保険料などで物件価格の6~10%程度はかかります。そのため頭金とあわせて物件価格の3割程度を現金で用意できればベストなのではないでしょうか。

融資審査で重要なのは金融機関と不動産会社の信頼関係

自己資金が少なくても収益物件の購入が可能なプランを用意している不動産会社もあります。そのため貯金が少ないからといってあきらめることはありません。

 

例えば、ある業者においては4割以上のオーナーが、頭金10万円以内で不動産投資を始めることができたり、最長45年ローンができたりするなど、自己資金をできるだけ手元に残せる商品もあります。

 

融資審査を巡る環境はめまぐるしく変化していますが、最終的な決め手になるのは不動産会社と金融機関の信頼関係です。

 

信頼できる不動産会社を通すことで融資の審査が有利になることは十分考えられることなので、「どこに融資を申し込むか」だけでなく「どこから物件を買うか」も重要になります。

 

少ない頭金で長期ローンを組むことができれば、手元に資金が十分残ります。その場合は余った資金をリフォームやリノベーションなどの準備金に回すことも可能です。簡単に不動産投資をあきらめてしまう前に、不動産会社に思い切って相談してみましょう。

 

これからの不動産投資は高付加価値と差別化が重要なキーワードになります。これがオーナーの利益率を高め、長期的な健全経営につながるのです。

 

 

山崎 博久

リズム株式会社

アセットコンサルティング事業部長

 

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